韓国が勝った。
チェコを相手に1点のビハインドから逆転し、2-1。グループステージの初戦をものにした。
素直に、よかったと思った。
そのことに気づいたとき、少し不思議な気分になった。
35〜40年前のことを思い出す。
日韓戦といえば、険悪という言葉では足りないくらいの空気があった。ボールがベンチに転がっていっても、わざわざ蹴り込むような場面があった。審判の笛が鳴るたびに、双方のベンチが揺れた。スタンドの熱量というより、敵意だった。
あの頃の感覚からすると、今の自分の感情は隔世の感がある。
DAZNで試合をフルで見ながら、気がつけば韓国のチャンスで身を乗り出し、ピンチでため息をついていた。それが自然な反応として出てきた。意識してそうしたわけじゃない。ただそうなっていた。
感情は、ルールで変わるものじゃない。
いつの間にか変わっていた。
試合のMVPに挙げられた3人が、また象徴的だった。
同点ゴールを決めたファン・インボム。決勝点を挙げたオ・ヒョンギュ。そして何度も決定的なピンチを防いだキム・スンギュ。ソン・フンミンでもイ・ガンインでもない選手たちが、試合を決めた。
キム・スンギュはFC東京でプレーしたことがある選手だ。ファン・インボムは現在フェイエノールトに所属し、上田綺世と同僚だ。イ・ガンインは久保建英がマジョルカにいた時代の仲間だった。
選手同士の話を聞くと、お互いを認め合っているのがよく伝わってくる。
その繋がりが、こちら側の感情にも少しずつ染み込んでいったのかもしれない。Jリーグで、ヨーロッパのクラブで、何年も肩を並べてきた選手たちが、同じピッチで闘っている。その積み重ねが、「あちら」と「こちら」の境界線をじわじわと溶かしてきた。
チェコのコウベク監督は試合後、こう言った。
"あのシュートをGKがどうやって止めたのかわからない"
キム・スンギュの話だ。
ゴールキーパーという仕事の孤独さは、ちょっとわかる気がする。
ボールを止めるか、止められないか。それだけで試合が変わる。
記事には、W杯開幕の1週間前に娘が生まれたこと、いつかこの舞台の記憶を娘に残してあげたいという思いが触れられていた。
その試合で、彼は守りきった。
K-POPの影響もあるだろう。文化の交流もあるだろう。
ただ、もっとシンプルなことかもしれない。
ピッチの上で、一緒に汗をかいた選手がいる。その選手が世界の舞台で戦っている。それだけで、応援する理由としては十分だ。
ライバルというのは、目指しているものが同じだから生まれる関係でもある。
その関係が、対立から連帯に変わっていく過程には、どこかひっそりとした希望が宿っている。
韓国、おめでとう。
