招集を求めた側が、外れた。
その一点だけで、今回のブラジル代表W杯メンバー発表は語り継がれるかもしれない。
CNN Brasilの報道によれば、カルロ・アンチェロッティ監督に対してネイマールの招集を働きかけていた選手の一人が、チェルシーのジョアン・ペドロだった。「彼に来てほしい」と公の場で言い、その結果、自分がいなくなった。26人の枠はネイマールに渡り、ジョアン・ペドロの名前はリストに残らなかった。
皮肉、と片付けるのは簡単だ。でも、そう簡単ではない気がしている。
サッカーの世界には、チームメイトを「守る」文化がある。ロッカールームで長年一緒にやってきた仲間のために、外部に向けて声を上げる。それ自体は美しい行為だし、プロのアスリートとして当然の連帯感でもある。
カゼミーロも同じだった。マンチェスター・ユナイテッドで苦しい時間を過ごしながらも代表での信頼を保ち続けているベテランは、複数の機会にネイマールへの支持を表明していた。
"ネイマールは試合を変えられる選手だ"
その言葉は間違っていない。125試合79ゴールという記録が示すように、ネイマールがブラジル代表に残してきたものの重さは疑いようがない。ただ、カゼミーロが言いたかったのは過去の数字のことではなかったはずだ。今の、傷だらけのネイマールが、まだ「試合を変えられる」かどうか——その問いに答えを持っているのはアンチェロッティだけで、我々には分からない。
ネイマールにとってこれが4度目のW杯になる。そしておそらく、最後の。
長期離脱を繰り返し、コンディションへの疑問符が消えないまま、それでも選ばれた。チームメイトからのロビー活動が最終的な判断に影響したかどうかは分からないが、アンチェロッティが完全に無視したわけでもないだろう。監督というのは、数字と状態だけを見て決断しているわけじゃない。ロッカールームの温度も、確かに読む。
ただ、そういう「空気」に従って選んだ結果が悲劇になる例も、サッカー史には少なくない。期待を背負ったベテランが、大舞台で動けなかった。チームメイトの善意が、却ってチームの足を引っ張る形になった。そういうことは起きる。
だからこそ、アンチェロッティの判断が問われるのはメンバー発表の瞬間ではなく、試合の中でネイマールがどう使われ、どう機能するかのほうにある。
ジョアン・ペドロの話に戻る。
彼がネイマールの招集を求めた動機は純粋だったと思う。代表の仲間のために声を上げた。でもその結果、自分の席がなくなった。そこには悪意も陰謀もない。ただ、残酷な算術がある。
W杯の26人枠というのは、本当に残酷だ。一人増えれば、一人消える。その構造は変わらない。
ジョアン・ペドロがチェルシーでどんなシーズンを送ったかとは無関係に、「ネイマールの枠」が生まれた瞬間に、誰かの夢が終わった。それがたまたまネイマールを推した本人だったというのは、フィクションなら出来すぎた展開だが、現実はそういう顔をしていることがある。
4度目のW杯。
最後かもしれないという言葉を、ネイマールは何度も周囲から与えられてきた。それでも彼はピッチに戻り、また消え、また戻ってきた。今回は本当に最後かどうか、本人にも分からないかもしれない。
ただ、確かなことが一つある。
彼を送り出そうとした声があった。外れた者の中にも、その声の主がいた。ブラジル代表の26枠に何が詰まっているのか、そういうことも込みで、この夏のW杯は始まる。
