FC東京時代の松木は、闘争心が前に出る選手だった。
相手にぶつかり、ボールを奪いに行き、それがそのまま魅力にもなっていた。
ただ筆者には、それが前に出すぎているようにも見えた。
数字にも少し表れている。
J1の2シーズン目までで、警告は合わせて10枚、退場は2回あった。1回目は2022年4月の横浜F・マリノス戦で、2枚目の警告によるもの。2回目は2023年6月の同じカードで、競り合いで右ひじが相手の顔に当たり、VARを経て一発退場になった。
2024年の夏、サウサンプトンへの移籍が決まった。
1年目は、同じグループのクラブであるトルコのギョズテペに貸し出された。
この時期の松木は、全力なのは伝わってくるのに、余裕がないように筆者には見えた。急いで、正しくない選択をしている場面が目についた。
警告の数字は、ここでいちばん悪くなっている。
リーグ戦1024分で警告5枚。205分に1枚の計算になる。
そのギョズテペで、松木は監督にこう言われたという。
止まってボールを受けると、ディフェンダーに潰される。
今年2月のPIVOTのインタビューで本人が明かした話だ。そこから、受ける前の駆け引きや、背後へ抜け出す動きを意識して学ぶようになったと話している。
激しい当たりが続くチャンピオンシップでは、タックルされる前にボールを離すことも意識しているという。
サウサンプトンに戻った最初のシーズンは、いきなり出番を失った。
8月の終わりから12月の終わりまで、リーグ戦で1分も出られない時期が4カ月近く続いた。メンバーから外れた試合も多かった。
それでも、紅白戦では毎日100%でやり続けたと本人は話している。年末のバーミンガム戦で途中から13分だけ出ると、次の試合から先発に入った。
エッケルト監督は2月、2ゴールを挙げたQPR戦のあと、試合に出られない時期にも謙虚でいられることを松木の長所に挙げた。地元紙の報道では、出場しない時でも基準を下げないこと、プレッシャーの中でもボールを失わないことも評価している。
サウサンプトンに来てからの数字は、トルコ時代とはっきり違う。
リーグ戦の警告は、2シーズンで計1914分のうち2枚。957分に1枚で、ギョズテペ時代のおよそ5分の1になった。
パス成功率は、先発に定着した今年の前半が78.0%、今季が83.0%。
ただ、反則の数そのものは大きく減っていない。90分あたり、ギョズテペ時代の1.76回に対して今季は1.36回。
カップ戦では今も警告をもらっていて、FAカップでは193分で2枚だった。
ぶつかりに行く姿勢は、変わっていない。カードになる当たり方が減った、と見るほうが正確だろう。
熱さそのものも残っている。
ベンチ外だった時期について、松木は、練習では自分が活躍していて、監督に見る目がないと思うほど自信があったと振り返っている。
熱さが消えたのではない。出し方が変わったのだと、筆者は見ている。
今季の松木は、右ウイングで12試合に出て3得点を挙げている。
本人は、中央でプレーしたい気持ちと、監督に求められる「幅を取る役割」の間で葛藤があったと話していた。目標に挙げたのは、同じ左利きで右から切れ込む堂安律だった。
ウルグアイ戦のゴールは、その役割の形そのものだった。
右で幅を取り、1対1をつくり、カットインして左足で打つ。
代表から戻ってからも、松木は点を取っている。
10月14日のノリッジ戦では、後半9分に決勝点を挙げた。味方のシュートをGKがはじいたところに、誰よりも早く詰めた。
10月24日、それまでリーグ9試合負けなしだったウェストハムとのアウェー戦では、開始2分に先制点。これも、味方のシュートのこぼれ球を左足で隅に流し込んだものだった。
代表から戻った後のリーグ戦4試合で2得点。代表活動に入る前の今季8試合では、1得点だった。
シュートも増えている。90分あたりで、代表前の1.1本に対し、戻ってからは2.6本。
チームもこの4試合を3勝1分で終えた。
代表の4試合を終えたあと、松木は、レベルの高い選手たちと一緒にやっても自分が劣っているとは思わなかったと話している。もっと自信を持ってプレーすれば、得点やアシストはもっと取れる。そう学んだという。
招集のとき、森保一監督は松木を、2列目から飛び出してゴール前で最後に点を取る仕事ができる選手だと評していた。
戻ってからの2点は、どちらもその形だった。
課題もある。
今季はシュート14本で3得点と、シュート数に比べて得点が多い。この割合が続くとは限らない。代表後の4試合も、わずか241分の話だ。先発と途中出場を交互にする起用も、まだ続いている。
それでも、2年前の松木なら、あの場面で同じ選択をしただろうか。
急がずに、毎日の練習で身につけた形を選んだこと。そこに、この2年で一番大きな変化があると筆者は思う。
