2月11日のことを思い出す。
サンダーランド戦の後半、遠藤航がストレッチャーで運ばれた。あの映像を見たとき、最初に頭に浮かんだのは「長くなる」という直感だった。
足の負傷でストレッチャー。それだけでも相当な話なのに、3ヶ月が経った今もなお、彼はピッチに戻れていない。
5月14日付でリバプール公式サイトが更新した負傷者・出場停止・コンディション情報によると、遠藤は現在もなお離脱中だ。
ただ、光明はある。
アルネ・スロット監督は4月24日の時点でこう語っている。
"ワタはピッチの外に出始めています。まだチームとは合流していませんが、リハビリチームと一緒にピッチ外でのトレーニングを始めています"
スロットが使った「ピッチの外に出始めています」という表現が、実は重要な一節だ。ケガの世界では、「屋内からグラウンドに出る」という行為が、回復における一つの節目を意味する。器具を使ったリハビリの段階を終え、実際の芝の感触を足の裏で確認し始めるフェーズ。それが始まったということだ。
もちろん、チームとの合流はまだ先の話だが。
公式サイトが5月14日時点でもなお離脱中として遠藤の名を掲載しているという事実は、完全回復には至っていないことを示している。
ただ、スロットのコメントを時系列で整理すると、少し違う景色が見えてくる。
整理しておきたい事実関係はこうだ。
- 負傷日:2026年2月11日(サンダーランド戦後半)
- 負傷の状況:ストレッチャーで退場
- 部位:足
- 4月24日時点:ピッチ外でのトレーニングを開始、チームとは未合流
- スロット監督の見通し:「シーズン終盤に復帰することを期待・予測している」
- 復帰が現実的な試合:5月17日アストン・ビラ戦、または最終節ブレントフォード戦
- 公式サイト更新日:2026年5月14日
スロットが4月24日の段階で「マンチェスター・ユナイテッド戦や次の試合には間に合わない」と言いつつ、「シーズン終盤の復帰を期待・予測している」と表現した。「期待」と「予測」を並べたのは、単なる希望的観測ではなく、ある程度の根拠がある、という意味合いとして受け取っていい。
足の負傷でストレッチャーを経験した選手が、3ヶ月後にグラウンドに出て動き始めているというのは、実は決して遅い回復ではない。
ピッチに立ったことがある人間なら分かると思うが、足首や足部の深刻な損傷は、痛みが消えてからも「使える状態」になるまでに時間がかかる。荷重をかけながら走れるか、方向転換に耐えられるか、相手との接触場面で本能的に体を守ってしまわないか。そうした段階を一つひとつクリアしていく作業が必要だ。
遠藤がいまグラウンドに出て動き始めているという事実は、その意味では前向きな情報だ。
ただ、残り試合数という文脈に置いたとき、話は変わってくる。
今季のリバプールには、遠藤以外にも多くの長期離脱者がいた。リバプール公式サイトによれば、コナー・ブラドリー、ジョヴァンニ・レオーニ、ステファン・バイチェティッチ、ヤイデン・ダンズ、そしてユーゴ・エキティケ。エキティケについては、手術の影響で今夏のW杯も欠場することが伝えられている。
負傷者リストに並ぶ名前の数が、今季のリバプールがどれだけ苦しい状況の中で戦ってきたかを物語っている。
遠藤の場合、チームの主要な戦力が入れ替わり立ち替わり抜ける中でのリタイアだった。シーズン序盤から中盤にかけて積み上げてきた存在感は、2月の後半にあのシーンで途切れた。
5月17日のアストン・ビラ戦か、最終節のブレントフォード戦か。
残り試合を考えれば、もし遠藤が戻るとしても、それは本当に「シーズンの終わり」だ。タイトルの行方が決まる前後の、数分間かもしれない。フル出場はまず無理だろう。
それでも、ピッチに戻る意味はある。
選手にとって、シーズンの最後をケガで過ごすのか、たとえ短時間でもピッチで締めくくれるのかは、次のシーズンへの体と心の準備にとって全く違う話だからだ。
公式サイトの更新が5月14日付で、試合が5月17日という状況。数日でどこまで状態が変わるかは、正直なところ見通せない部分がある。スロットが「期待・予測している」と言いながら断言しなかった理由も、そこにあるのだろう。
遠藤のシーズン最後の数ページがどう書かれるか、あと数日で分かる。
