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遠藤 航
リヴァプール · MF

主将の靭帯が「完全になくなった」夏、それでも遠藤航はピッチを求める

2026年5月22日 リリース·独自記事

靭帯が「完全になくなった」という表現を、あなたはどう受け取るだろうか。

断裂でも損傷でもなく、「なくなった」。医学的な正確さを求めるなら別の言い方があるはずだが、その言葉の選び方には、当事者が感じた衝撃が滲んでいる気がする。ピッチに立ち続けることを生業としている人間にとって、関節を支える構造物が消えるというのは、単なる怪我の話ではない。

遠藤航は33歳。今年の6月、北米のワールドカップが開幕するとき、彼はその年齢でピッチに立とうとしている。

2月11日を最後に、リヴァプールでのリーグ戦出場はない。4月に入ってようやく靭帯消失という事態の全容が明らかになり、当初は「シーズン終了まで復帰なし、ワールドカップに向けて準備を」という見通しが語られた。

だが回復は予想を上回るペースで進んだらしい。日本サッカー協会がW杯メンバーを発表した際、遠藤は自らの言葉でこう語っている。

"怪我からの回復は簡単ではありませんでしたが、自分自身を信じて準備を整えるために働き続けます"

簡単ではなかった、という部分に目が止まる。華々しい復活宣言ではなく、苦しさを認めたうえで前を向く言葉。主将らしいといえばそうなのだが、この一文の重みは、ボールを蹴ったことがある人間でないと少し伝わりにくいかもしれない。靭帯という目に見えない組織が「ない」状態で動かしていた関節を、どう信頼し直すか。それは意志の問題でもあるが、もっと根本的には、身体との対話の問題だ。

遠藤のキャリアを振り返ると、湘南で原石として磨かれ、浦和で存在感を示し、ベルギーのシントトロイデンを経てシュトゥットガルトへ。ブンデスリーガで4シーズンを過ごし、2023年夏にリヴァプールへ移籍した。欧州の主要クラブに日本人ボランチが腰を据えるという、かつては想像しにくかった光景が現実になった瞬間だった。

そのリヴァプールでの3年目が、今まさに終わろうとしている。

スロット監督の下ではほとんど出番がなかった。それは事実だ。契約は1年残っているが、クラブが彼を「不要」と判断する可能性も十分にある。This Is Anfield の報道によれば、週給は5万ポンド程度とされており、欧州の主要クラブの水準としては決して高くはない。移籍市場での価値という冷たい計算の上では、今夏のワールドカップは遠藤にとって文字通り「見せ場」になる。

だが、それよりも先に、彼はアンフィールドでもう一度ピッチに立とうとしている。

シーズン最終節。まだ全体練習には戻れていない状態で、それでも彼はそこに間に合わせようとしている。コメントの中でわざわざ「来週はすべてのリヴァプールFCのファンをアンフィールドのピッチで見たいと思っています」と書いたのは、義務感ではなく、純粋な意思表示だと思う。

3年間を一緒に過ごしたサポーターへの、自分なりの挨拶をしたい。その気持ちが伝わってくる。

3度目のワールドカップ。

カタールでの2022年大会、遠藤はドイツとスペインを相手に中盤の要として機能した。あの「ジャイアントキリング」の文脈で語られることが多いが、個人的に印象深かったのは、体格やフィジカルで上回る相手に対して、ポジショニングと読みだけで拮抗していた場面だ。力でねじ伏せるのではなく、場所を先に取って守る。そういうボランチの本質を体現していた。

33歳という年齢は、その種の知性がもっとも円熟する時期でもある。ただし、前提として脚が動くことが必要だ。靭帯が「完全になくなった」足首を抱えながら、その前提をどこまで取り戻せているか。

ワールドカップ開幕まで、残り1ヶ月を切った。

アンフィールドでの最終節が、リヴァプールの選手としての最後の試合になるかもしれない。それはまだ分からない。だが少なくとも、遠藤は「そこに立つ」ことを選んでいる。怪我を言い訳にして離れていくことを、しない。

主将、というのはたぶん、そういうことなのだと思う。

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