4試合、負けなし。
ウルグアイに3-1、ベネズエラに2-1、エクアドルと0-0からPK戦5-4、ニュージーランドに2-1。
キリンカップは15年ぶり、12回目の優勝だった。
ニュージーランドの新聞は、日本を黄金期にあるチームと書いた。格が一枚上だった、と。
スペインの新聞は、最高の形で終えた、と書いた。
結果だけを見れば、そのとおりだ。
ただ、4試合を観終えて残った実感は、少し違う。
新しいものを見た、というより、知っていたものを確かめた。
W杯からの3か月で、代表は何を更新したのか。この15日間を、その順番で振り返りたい。
まず、確かめられたもの。
上田綺世は、4試合194分で4ゴール1アシスト。
先発はニュージーランド戦だけで、あとの3試合は途中出場だった。
ウルグアイ戦は26分の出場で1ゴール1アシスト。ベネズエラ戦は後半45分で2ゴール、放ったシュート2本が2本とも枠に飛び、2本とも入った。
昨季フェイエノールトで40試合26得点。W杯ではチュニジア戦で2得点。リールに移って4試合で3得点。
点を取る力は、どの場所でも同じ数字になって出てくる。代表でも、そのまま出た。
佐野海舟は、3試合250分でインターセプト13本。チームで2番目に多い瀬古歩夢の8本を、1試合少ない出場で上回った。
エクアドル戦はインターセプト6本、タックル4本、デュエル10回のうち8回に勝った。
W杯のブラジル戦で、横パスを読んで奪い、そのまま持ち上がって先制点を決めた男は、3か月後も同じことをしていた。
変わったのは、クラブのほうかもしれない。マインツでは今季4試合で2アシスト。インターセプトは90分あたりで昨季の1.97本から3.52本に増えた。
ただ、代表の4試合で海舟が成長したかどうかは、正直に言えば分からない。W杯の時点で、すでにこのレベルのプレーをしていたからだ。
瀬古歩夢は、4試合すべてに先発した。342分は、チームでいちばん長い。
ベネズエラ戦はパス68本、成功率100%。ニュージーランド戦はパス96本で、これもチーム最多。
ル・アーヴルで今季5試合すべてに先発して90分を終えている選手が、代表でも同じ安定を出した。
主力になっていける力を見せた、というより、もう主力の使われ方をしていた。
次に、芽。
この15日間でいちばん楽しみになったのは、久保建英と鈴木唯人の距離だ。
ウルグアイ戦、鎌田大地の縦パスを久保がフリックして鈴木に当て、リターンを受けた久保がシュートまで持ち込んだ。ブロックされたが、崩しの形はできていた。
エクアドル戦の後半開始直後には、久保が左のスペースに斜めのパスを通し、鈴木が走り込んだ。収めきれず、シュートには至らなかった。
久保は試合後、鈴木について似たようなタイプだと思っている、やりやすい、と語った。
鎌田は鈴木を、確実にトップタレントの一人で、ブレイクは時間の問題だと言った。
ここに堂安律が加わると、右サイドの熟練した連係と中央の新しい連係がつながる。
エクアドル戦では、堂安が右のウイングバック、久保と鈴木が2シャドーで、3人が同時にピッチにいた。
68分間だった。3人が同時にいた時間は、4試合でその68分しかない。
鈴木の数字は、2試合先発の145分でシュート3本、ゴールもアシストもない。
フライブルクでは今季7試合で4得点を挙げている選手だ。
ニュージーランド戦で、5バックで引いた相手を崩しあぐねた71分までの時間に、鈴木はベンチにいた。
芽は見えた。異次元と呼べる段階には、まだ遠い。
そして、壁。
佐野航大は、PSVで8月22日から9月19日まで6試合連続で90分間ピッチにいた。
代表では4試合で57分。ウルグアイ戦に先発して前半で退き、ニュージーランド戦の12分だけが残りの出場だった。
ウルグアイ戦の前半、日本はシュート3本に対して相手に8本を打たれ、30分を過ぎてから押し込まれた。
航大は試合後、低いブロックからの前進が体力的にも難しく、守備の行き方を整理し直す必要があると振り返った。オランダの媒体にも、守備でもっとボールを奪い、すぐに攻撃へ出るべきだったと話している。
クラブで不動の存在になった選手が、代表に来ると、周りの全員がどこかひとつ突き抜けたものを持っている。
守備も、パスも、運ぶのも、打つのも高い水準でこなす選手が、ひとつだけ飛び抜けたものを持つ選手の中で居場所を得るのは、並大抵のことではない。
それが、この15日間でいちばんはっきり見えた壁だった。
全部を高い水準で、という道で代表の中心になった選手は、世界にもそう多くない。航大には、その少ない例になってほしい。
佐藤龍之介は、ベネズエラ戦に先発して45分だけプレーした。
相手の守備と中盤の間で受け、前を向く。評点は7.00。
その夜、代表を離れた。日本協会はクラブ事情と発表し、スペインの報道は、新監督アギーレを知るためにバレンシアが早期帰還を求めたと伝えた。
バレンシアでは5試合0得点、直近2試合は出場0分。
代表の前に、クラブの壁がある。
4バックの話をしておきたい。
ニュージーランド戦、日本は4バックで先発した。先発で4バックを組むのは2024年3月の北朝鮮戦以来だと報じられた。
森保一監督は試合後、「戦術の幅を増やすというところで選手にチャレンジしてもらった」と語り、4戦目で4バックを使う方針は活動の前から決めていたと説明した。
ただ、森保政権は2018年に4バックで始まっている。
この日の4バックは、原点に戻ったのであって、新しい場所に着いたのではない。
支配率75%、シュート24本、コーナーキック8本で、相手GKに9セーブをさせながら、71分まで1-1だった。
ニュージーランドの監督は、日本の強みに対抗するために形を変えたと話した。相手が形を変えたとき、日本が形を変えて優位を作った場面は、この試合ではまだ見えなかった。
最後に、試合の外。
今回の活動は16日間、4試合だった。FIFAが9月と10月の代表ウィークをひとつにまとめたからだ。
森保監督は8月の時点で、1・2戦目と3・4戦目で顔ぶれを入れ替えるイングランド流の2段階招集を選択肢に挙げていた。
実際には31人を一括で招集し、ウルグアイ戦からベネズエラ戦で先発10人、ベネズエラ戦からエクアドル戦で10人、エクアドル戦からニュージーランド戦で5人を入れ替えた。
試合の中で試した。試合の外で何を試したかは、ほとんど見えない。
全面公開の練習は1回。10月2日はオフ。決勝前日には名波コーチが攻撃陣に世界のトップ選手の映像を見せたと伝えられた。分かるのは、その程度だ。
16日間4試合の形は、これからも続く。
11月はシンガポールでブラジルとパラグアイ。1月はアジアカップで、森保監督の契約はそこまでだ。
試合は11日間を映さない。
次のレベルが試合の中に現れるとしたら、それは11日間の使い方が変わったあとだと思う。
確認は、無駄ではなかった。
上田は点を取り、海舟は奪い、瀬古は4試合立っていた。久保と鈴木の距離は、たしかに縮まった。
でも、確認しただけでは次に進まない。
15日間の、試合ではない11日間。そこに何を置くかを、次の代表ウィークで見たい。
