就任わずか5か月の監督が、ベテランを大量に切り捨てた。カタール大会経験者はわずか6人。チュニジアのグループF第2戦の相手・日本は、そのチュニジアをどう見ているのか。現地メディアが語るのは「冷静な野心」だ。だが、経験の浅さという弱点を、チュニジア側は本当に直視しているのか。対戦国アナリストの目から、その実像を読む。
# 現地メディアの視点
チュニジアの現地メディアが今回のW杯を報じる温度感は、一言で言えば「期待と慎重論の同居」だ。
AfricaFootは、グループFを「非常にレベルが高いが、歴史的チャンスでもある」と位置づけた。チュニジアはW杯でグループステージを一度も突破していない。だからこそ、元主将ラドヒ・ジャイディが語った言葉には重みがある。
"W杯に臨む時は、勝ち上がる野心を持たなければならない。しかし冷静さも必要だ"
野心と冷静さ。この二語の並びが、チュニジアメディアの論調を象徴している。
一方、La Presse de Tunisieは選考リストの「論争」に多くの紙幅を割いた。フェルジャニ・サッシ(101キャップ)やヤシン・メリア(95キャップ)といった経験豊富な顔の落選が、国内ファンの間で議論を呼んでいることを詳細に伝えている。ラムーシ監督は「代表チームこそが真のスターだ」と語ったが、その言葉が受け入れられるかどうかは、ピッチで証明するほかない。
各メディアに共通するのは、スウェーデン戦の初戦が「全てを決める」という認識だ。AfricaFootが明示しているように、出だしにつまずけばカルタゴ・イーグルスは即座に苦しい立場に追い込まれる。日本戦はそのスウェーデン戦の結果を引き受けた状態で迎える試合になる。
# 日本代表への評価
現地メディアが日本代表を直接分析する記事は今回の素材には多くない。しかしその「言及の少なさ」自体が、ある種の評価を示している。
AfricaFootは「オランダ、日本、スウェーデン、彼らはヨーロッパの強豪クラブで活躍する選手たちだ」と一括りにした。日本を単独で特別視しているわけではなく、グループF全体を「乗り越えるべき壁」として均等に眺めている。これは軽視というよりも、グループ突破というミッションの難しさを率直に認めている姿勢だ。
チュニジア側が日本に対して明示的に警戒している点は素材からは読み取りにくいが、日本の技術的な組織力と規律正しい守備ブロックは、欧州組主体のチュニジアにとって間違いなく計算しにくい相手だ。欧州のクラブでプレーするチュニジア選手たちは欧州スタイルの相手には慣れている。しかしアジア的な規律とプレス強度を組み合わせた日本の戦術体系は、準備段階で十分に再現できるかという問題がある。
そこにチュニジアの本当の不安がある。W杯経験者6名という少なさ、監督のトーナメント経験も初めて。大舞台の「圧」に対して、チームとして機能するための時間が十分に取れているかどうか。Pan Africa Footballが指摘した「大胆な世代交代」は、日本戦では実戦経験の差として表れる可能性がある。
# 試合展望
戦術的な骨格を作る上で、ラムーシはハンニバル・メジュブリとエリエス・スキリの中盤コンビに多くを委ねる構図を描いていると見られる。スキリはアイントラハト・フランクフルトでブンデスリーガの強度を日々経験する守備的な支柱であり、ハンニバルは推進力と技術を担う役割だ。この二人が噛み合えば、チュニジアの中盤は高い水準で機能しうる。
ただし問題は「噛み合う」までの時間だ。オーストリア、ベルギーとの2試合の親善試合を経て、どれだけ「チームとしての感覚」が積み上げられているか。日本戦はグループF第2戦、スウェーデン戦の結果次第でチームの精神状態が大きく変わる位置にある。
チュニジアが勝ち点を拾える可能性があるとすれば、セットプレーと素早いカウンターを組み合わせた「少ないチャンスを確実に仕留める」展開だ。PSGのハリル・アヤリやFCコペンハーゲンのエリアス・アシュリが前線で推進力を出し、スキリが後ろを締める。一方で日本が球際で主導権を握り続ければ、経験の浅い若い選手たちが90分間の強度を保てるかという体力面の課題が浮上する。
ラムーシが語った「細部で決まる勝負」という言葉は、おそらく日本戦に最もよく当てはまる。組織力では互角以上の相手に対して、個の判断とチームとしての連携がどこまで仕上がっているか。6月21日のモンテレイが、そのすべての答えを出す。
