2022年のカタール大会最終節、グループD。
チュニジアはフランスを1-0で下した。当時の世界王者を、である。それでも彼らはグループを突破できなかった。勝点の計算が合わず、歴史的な勝利は同時に、徒労感に彩られたものでもあった。
あの矛盾した夜を覚えているだろうか。
勝って、消える。それがチュニジアというチームの、ある種の宿命のように見えていた。
今大会、チュニジアはグループFに入った。オランダ、日本、スウェーデンと同組。4チームの中でFIFAランクは最下位の41位だ。
数字だけ見れば、最も分が悪い。
だが、そういうチームのことを、私は安易に「噛ませ犬」とは呼べない。前回大会でフランスを沈めたチームを知っているから。そしてもっと言えば、ランキングというものが、ピッチの上でどれほど無力なものかを、体でわかっているから。
指揮を執るのはフランス人のサブリ・ラムーシ監督。ノッティンガム・フォレスト、コートジボワール代表など多様なキャリアを持つ。欧州スタンダードと北アフリカの気質を橋渡しできる人物、という評価を聞いたことがある。実際のところ、そういう監督の存在は重要だ。戦術を輸入するだけの指揮官では、チュニジアのような個の力を束ねることは難しい。
主役は何人かいる。
エリエス・スキリはこのチームの精神的な柱だろう。アイッサ・ライダウニ、モハメド・ドレジャ、そしてハニバル・メジュブリ。欧州各クラブで実績を積んできた顔触れが並ぶ。若い力としてはFWカリル・アヤリ、守備ではロリアン所属のMBモンタサール・タルビの名前が挙がっている。
そしてひとつ、妙な話が引っかかっている。
最も衝撃的な「落選」として現地で話題になった選手——カールスルーエ所属のルーイ・ベン・ファルハートのことだ。Khel Nowの記事によれば、彼の父親が「息子はW杯に出るには若すぎる」と公言したという。
親がそう言う。
それが本音なのか、落選を受け入れるための言葉なのか、外からは判断できない。だが、その発言が「衝撃的な落選」として語られているということは、少なくとも現地では彼が候補に近かったと思われていた、ということだ。選考の際の最後の線引きは、いつも外からは見えない場所で引かれる。
日本との試合は6月20日、グアダラハラ——と原記事には記されているが、参考情報によれば、対戦会場はモンテレイとされている。詳細は今後の公式情報を参照されたい。
いずれにせよ、日本からすれば、このチュニジアは軽視できる相手ではない。グループ最下位のチームがフランスを破った実績を持つ。その事実は消えない。
"前回大会ではグループ最終戦で当時の世界王者フランスを破り、歴史的な番狂わせを演じた"
という原記事の記述は、チームの「格」を測る際に欠かせない文脈だ。
北アフリカのチームが大舞台で見せる粘り強さは、単なる気質論では片付けられない。組織的な守備と、ひとつのカウンターを仕留めきる精度の合わせ技。あの種の試合運びは、経験からしか生まれない。
チュニジアは今大会で3大会連続のW杯出場を果たしている。舞台慣れという点では、格上とされるスウェーデンとも大きく変わらない。
番狂わせが起きるとしたら、どの試合か。
オランダ戦は厳しい。でも、スウェーデン戦や日本戦は、やりようによっては見えてくるかもしれない。
私がピッチで対戦していたとしたら、正直、あまり対戦したくないタイプのチームだ。ランクで下に見ていると、必ずどこかで足をすくわれる。何より、あのフランス戦のような「捨て身の勝利」を経験したチームには、独特の怖さがある。勝負どころを感覚で知っている集団、とでも言うべきか。
カルタゴ・イーグルスは、まだ飛ぶ気でいる。
