刷新、という言葉では足りないかもしれない。
Pan Africa Footballが伝えたところによれば、チュニジア代表のサブリ・ラムーシ監督が、2026年FIFA W杯に臨む最終26名を正式に発表した。アメリカ・カナダ・メキシコ共同開催、6月11日から7月19日にかけて行われる大会に向けた、現時点での最終答えだ。
そのリストを眺めていて、ひとつの数字が目に止まった。
2022年カタール大会を経験したメンバーが、わずか6人しかいない。
同記事によれば、モンタサール・タルビ、ディラン・ブロン、ハンニバル・メジブリ、エリエス・スキリ、アリ・アブディ、アニス・ベン・スリマヌ。この6名だけが、あのカタールの記憶を身体の中に持って今大会に乗り込む。
26人中6人。比率にして23%。
残りの20人近くは、W杯のピッチが初めてになる。あの独特の緊張感を、まだ知らない。スタジアムの熱量、試合前夜の静寂、アップ中に見える相手ベンチの空気。そういったものを、彼らは本番の中で初めて体に刻む。
それが「大胆」なのか、「必要な刷新」なのかは、大会が終わってからしか分からない。
ラムーシ監督自身も、今回が主要トーナメントとして初めての選手選考になる、と記事は伝えている。1月に前任のサミ・トラベルシから指揮官の座を引き継いで、まだ半年も経っていない。
つまり、監督も選手も、大半がW杯の舞台を経験していない状態でグループステージに入る。
これを「フレッシュ」と見るか、「未知数」と見るか。おそらく両方だ。
"2022年カタール大会を経験したメンバーはわずか6名のみ"
記事がこの事実を強調して書いているのは、チュニジア代表が意図的に過去を切り離したからではないか、という読み方もできる。サポーターや関係者には痛みを伴う選択だったかもしれない。それでも選んだ、ということでもある。
チュニジアが入ったのはグループFだ。
相手は開催国カナダ、オランダ、そして日本。
このグループの顔ぶれを見ると、チュニジアの置かれた立場が少し見えてくる。オランダは欧州の強豪、カナダは自国開催のアドバンテージを持つ。日本はアジア屈指の技術と組織力を備えている。
「勝ち上がれる」と言い切れる相手が一つもない、タフなグループだ。
だからこそ、26名の選び方に意味が出てくる。経験者を重んじるか、フレッシュな才能で勝負するか。ラムーシが出した答えは明らかに後者に傾いている。
整理しておきたい事実関係はこうだ。
- 発表日:2026年5月16日
- 登録人数:26名
- 大会期間:6月11日〜7月19日(アメリカ・カナダ・メキシコ共催)
- チュニジアのグループ:グループF(カナダ、オランダ、日本)
- カタール経験者:6名(タルビ、ブロン、ハンニバル・メジブリ、スキリ、アブディ、ベン・スリマヌ)
- 監督:サブリ・ラムーシ(2026年1月就任、前任はサミ・トラベルシ)
記事が書いていないこと、がある。
なぜこれほど大胆な世代交代に踏み切ったのか、という文脈だ。各選手の所属クラブも、選外になった有名選手の名前も、今回の発表には出てこない。ラムーシがどういう哲学でこの26人を選んだのか、どの試合の何を見てこの決断に至ったのか。
それが分からないまま、26人のリストだけが先に世界に出た。
監督就任から半年での最初のW杯選考は、ある意味でその監督の「本音」が最もよく出る瞬間だとも思う。経験値より可能性に賭けるか、実績ある顔を並べて安心を取るか。ラムーシは前者を選んだ。それが正解かどうか、グループFの三試合が教えてくれるはずだ。
日本と対戦するときに、この26人がピッチでどんな顔を見せるのか。少し楽しみにしている。
