就任わずか5か月の指揮官が、ベテランを切り、若さに賭けた。チュニジアが6月21日に日本と向き合うとき、ピッチに立つ顔ぶれの大半はW杯という舞台を初めて経験する選手たちだ。現地メディアの論調は「挑戦」と「懸念」の間を揺れている。この「刷新」が持つ意味と、日本が警戒すべき本当のポイントを読み解く。
# 現地メディアの視点
チュニジア国内外のメディアが今大会に向けて共通して取り上げているのは、ラムーシ監督による「世代交代の大胆さ」だ。AfricaFootやLa Presse de Tunisieの論調を並べると、選手発表そのものより、外れた名前への反応のほうが紙面を賑わせていることが分かる。フェルジャニ・サッシ(101キャップ)、ヤシン・メリア(95キャップ)といったベテランの落選は、ファンの間で今も議論を呼んでいる。
一方、France 24はより冷静な視点からラムーシの選択を整理している。「チームの刷新を望んでいる」という指揮官の姿勢は早い段階から伝えられており、むしろ落選への批判は織り込み済みという見方もある。Pan Africa Footballが強調した「カタール大会経験者わずか6名」という事実は、この刷新の深さを端的に示している。
共通する論調の底には、グループFへの静かな畏怖がある。オランダ、スウェーデン、日本と並んだ組み合わせを、Tunisie Tribuneは淡々と伝えながらも、準備日程の詳細をあえて丁寧に報じることで、この大会に向けた真剣度を示している。現地の空気感は「試練を承知で挑む」というものだ。
# 日本代表への評価
現地メディアが日本を単独で深く掘り下げた記事は多くない。AfricaFootで元主将のラドヒ・ジャイディが
"オランダ、日本、スウェーデン、欧州の強豪クラブで活躍する選手たちだ"
と語ったように、日本は「ヨーロッパの組織力と技術を持つ強敵」というひとまとめの評価で語られがちだ。これはある意味で日本にとって有利な状況でもあり、危険な状況でもある。研究が深くないということは、意外性への対処が遅れるリスクを意味するからだ。
チュニジア側の関心がより強く向いているのは、自チームの内部問題だ。スキリとハンニバル・メジュブリが中核を担う中盤が、実際の試合でどれだけ連動できるかという不安は、現地メディアも間接的に認識している。欧州各地のクラブから集まった選手たちがW杯本番でいきなり「呼吸を合わせる」難しさは、2試合の親善試合だけで解消できるものではない。
ただし、日本が軽視すべき相手でないことは自社の既出分析でも触れている通りだ。2022年大会でフランスを下したあの粘りは、この代表チームのDNAに刻まれている。個々の局面で上回れる選手がチュニジアにいることは、日本側も認識しておく必要がある。
# 試合展望
6月21日、モンテレイ。チュニジアの第2戦は、スウェーデン戦の結果次第で意味が大きく変わる。
AfricaFootが指摘したように、初戦の結果がこのチームの士気を左右する。スウェーデンに勝てば、若いチームに自信が生まれ、日本戦にも積極的に出てくるだろう。逆に初戦で躓けば、日本戦は背水の陣となり、守備を固めたカウンター狙いにシフトする可能性が高い。
注目するべきは、やはりハンニバル・メジュブリだ。バーンリーで経験を積んだこの中盤の選手は、強度と推進力を兼ね備えており、日本の中盤が捕まえきれない動きをする場面が想定される。エリエス・スキリが守備的に支え、ハンニバルが前に出るという役割分担が機能したとき、チュニジアは最もしたたかになる。
チュニジアが懸念しているのは、自分たちのまとまりの問題だ。監督就任から半年、カタール経験者が少ない中で迎える大会。その不確実性は、日本にとって逆説的に読みにくさを生む。「型」が固まっていないチームは、時として想定外の動きをする。日本が自分たちのゲームプランを押し付けられる展開になるか、チュニジアのカウンターに足元をすくわれる展開になるか。モンテレイの試合は、どちらに転んでもおかしくない。
