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鈴木 唯人
フライブルク · MF/FW

速く見えない男が、リーグで7番目に速い——鈴木唯人の速さは、一度ではなく、何度でも出る

2026年9月26日 リリース·独自記事

鈴木唯人を見ていて、速い、と思ったことがあるだろうか。

たぶん、ない。
ドリブルは縦に鋭い。判断は早い。ゴール前で落ち着いている。
そういう言葉で語られてきた選手で、足の速さで語られたことは、ほとんどない。

ところが、数字はそう言っていない。

ブンデスリーガの公式サイトには、DFLがスタジアムで計測した走行データが載っている。
その中の「最高速度」。シーズンで一度でも出した、いちばん速い瞬間の時速だ。
第4節を終えて、上位100人を確かめた。

鈴木唯人、時速35.52キロ。リーグ7位。

上にいるのは6人。マインツのベッカー、ドルトムントのガドゥ、ホッフェンハイムのダギム、ライプツィヒのゴミス、エルバースベルクのギャメラ、ドルトムントのバイアー。
サイドバックと、ウイングと、ストライカー。速さで飯を食っている顔ぶれだ。
その中に、175センチのトップ下がいる。

今シーズンだけの話ではない。

2022年、清水エスパルスにいたころの最高速度は、Jリーグの公式記録で時速34.3キロだった。清水の中で5番目。J1のトップ10には、入っていない。10位が35.0だった。
2024年の秋、デンマークのブレンビーで計測されたのは35.1キロ。スーペルリーガの9位。
そして今、ブンデスリーガで35.52キロの7位。

計測する会社も、方法も、リーグごとに違う。だから、1.2キロ速くなった、と単純には言えない。
ただ、欧州に来てからの2つの数字は、どちらもリーグの上位10人に入っている。
速い選手として語られたことがない男が、計測では、ずっと速い側にいる。

では、なぜ速く見えないのか。

同じ公式データの、別の項目を見ると分かる。
走行距離、38.7キロ。上位100人の中で82位。
スプリント、68回。31位。
インテンシブランという、公式が速度帯で区切っている強度の高い走りは280本で、20位。

最高速度は7位なのに、走った距離は下から数えたほうが早い。
走らない。でも、走るときは速い。

走行距離とインテンシブランの両方で上位100人に入った74人について、1キロあたり何本が強度の高い走りかを計算すると、鈴木は7.24本で8番目に高い。
たくさん走って目立つタイプではない。走った時間の中身が濃いタイプだ。

速さを見せる回数が少ないから、速さが印象に残らない。
たぶん、それだけのことだ。

もうひとつ、面白い数字がある。

昨シーズンのヨーロッパリーグ。
UEFAの公式記録で、鈴木の最高速度は34.8キロだった。上位50人のリストで41番目。
1位はヤングボーイズのヴィルジニウスで36.74。ベティスのアントニーが36.55、ポルトのウィリアム・ゴメスが36.51と続く。
鈴木は、ここでは目立たない。

ところが、放送映像から選手の動きを追跡しているデータ会社、グラディエント・スポーツの集計は違う。
こちらは一度だけの最高速ではなく、5試合以上に出た選手の「上位5回の平均」を最高速度としている。
その順位で、鈴木は34.3キロで1位。2位がアントニーの34.0、3位がウィリアム・ゴメスの33.1。

一度なら、アントニーのほうが速い。
何度でも出せる速さなら、鈴木のほうが速い。
同じ大会の、同じシーズンの、同じ3人で、順位がひっくり返る。

評判の側を、さかのぼる。

市立船橋のころに言われていたのは「判断の速さ」と「頭の良さ」だった。
清水時代のデータサイトで10点満点だったのは、ドリブルでチャンスを作る力。速さの項目はない。
ブレンビーに移ったときの現地の移籍分析は、ボールを持っても持たなくてもテンポのある選手、と書いた。
フライブルクが獲得を発表した2025年5月、取締役のヨッヘン・ザイアーは、得点と味方を生かす力の両方を持つ選手だと説明したうえで、こう続けている。

「His pace, flexibility and technique」

英語版のリリースで、最初に挙げた言葉が、pace だった。
6月に「まだ、ほとんどの人が知らない」と書いたとき、私は「ボールを持った状態での速さと、相手の逆をつく判断の速さ」と表現した。
クラブは、それより前に、走る速さも見ていた。

9月16日、ブンデスリーガの公式チャンネルが「自陣から全力疾走!」というタイトルで、グラッドバッハ戦の鈴木のチャンスシーンをプレーヤーカメラの映像で公開した。
スプリントは90分に19回ほど。そのうち、自陣からゴール前まで走り切る場面は多くない。
たぶん、その数少ない一度が、35キロの正体だ。

4試合で4ゴール。リーグの得点ランキングの、いちばん上に名前がある。
その4つの中に、速さで奪ったゴールはひとつもない。ヘディングと、こぼれ球と、走り込みと、同点弾。

速さはゴールにならない。
速さは、ゴール前にいる時間を作る。
鈴木唯人の速さは、そういう使われ方をしている。

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出典・引用について

出典・参考文献

直接引用部分 ・「His pace, flexibility and technique」— ヨッヘン・ザイアー(SC フライブルク取締役)、鈴木唯人獲得発表の公式リリース英語版(2025年5月20日 https://www.scfreiburg.com/en/latest/news/first-team/2024-25/yuito-suzuki-signs-for-sc-freiburg/)。全文は "Yuito can both score goals and set up his teammates. His pace, flexibility and technique will improve our overall attacking play as a team." 間接引用部分 ・市立船橋時代の評価(「判断の速さ」「頭の良さ」)はサッカーダイジェストWeb(2026年 https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=191933)ほか高校時代を扱った記事の要約 ・ブレンビー加入時の「ボールを持っても持たなくてもテンポのある選手」は 3point.dk の移籍分析(2023年8月12日 https://www.3point.dk/artikel/transferanalyse-en-suzuki-med-fart)の要約 ・Gradient Sports の集計(5試合以上出場・上位5回平均で34.3km/h・EL1位、2位アントニー34.0、3位ウィリアム・ゴメス33.1)はFootball Tribe Japan(2026年4月17日 https://football-tribe.com/japan/2026/04/17/352052/)が報じた内容。Gradient の元投稿は未特定(二次情報) 参考情報の使用 ・ブンデスリーガの最高速度・走行距離・スプリント・インテンシブランの順位と値はブンデスリーガ公式サイト(bundesliga.com、DFL公式計測)のシーズン累計を2026年9月26日に上位100人(スプリントは110人)まで確認して転記したもの(第4節終了時点)。「1キロあたりのインテンシブラン」は本サイトの派生値(両リストに載った74人で比較) ・上位6人の所属・ポジションはAPI-Footballの登録情報(自社DB) ・J1 2022年の最高速度34.3km/h(清水内5位)とJ1トップ10(10位35.0km/h)はJ.LEAGUE公式サイトの選手スタッツ「トップスピード」(2022シーズン・2024年4月18日更新) ・デンマーク・スーペルリーガ2024-25の35.1km/h(リーグ9位)はcampo.dk(2024年11月16日 https://campo.dk/2024/11/16/han-er-superligaens-hurtigste-spiller/、出典superliga.dk) ・UEFAヨーロッパリーグ2025-26の最高速度(鈴木34.8km/h、ヴィルジニウス36.74、アントニー36.55、ウィリアム・ゴメス36.51)はUEFA公式の選手ランキングデータ(上位50人、2026年9月26日取得)。「41番目」は上位50人リスト内の順位 ・清水時代のデータサイトはFootball LAB 2022(https://www.football-lab.jp/player/1629432?year=2022、ドリブルチャンス10点) ・Gradient Sports の計測方法(放送映像からのトラッキング)は同社サイト(https://www.gradientsports.com/) ・プレーヤーカメラ動画はブンデスリーガ公式(スポーツナビ配信 2026年9月16日 https://sports.yahoo.co.jp/video/player/27864891、第3節ボルシアMG戦) ・4試合4ゴール・得点ランキング1位・起用位置(4試合とも2列目中央)・フライブルクの順位はAPI-Football(自社DB、2026年9月26日08:00 UTC)。4ゴールの内訳(CKからのヘディング29分・折り返しに合わせた48分・カウンターからの走り込み55分=8月30日ブレーメン戦、48分の同点弾=9月19日フランクフルト戦)は同APIのイベント記録とスポニチ(2026年8月30日) ・既存記事: 「まだ、ほとんどの人が知らない。鈴木唯人という才能について」(2026年6月27日) 筆者の解釈・分析 ・「走らない。でも、走るときは速い」(走行距離82位・最高速度7位という順位の対比からの解釈) ・「速さを見せる回数が少ないから、速さが印象に残らない」(筆者の見立て。読者の印象を測ったデータはない) ・「何度でも出せる速さなら、鈴木のほうが速い」(定義の異なる2つの集計を並べた解釈。計測者・方法が違うため厳密な比較ではない) ・「自陣からゴール前まで走り切る場面は多くない」「その数少ない一度が、35キロの正体だ」(動画のシーンの速度は公開されておらず、スプリント18.9回/90という頻度と最高速度からの推定表現) ・リーグごとに計測者が異なるため、J1→デンマーク→ブンデスの数値の推移は「傾向」として書いている ・第4節終了時点の小標本。順位は数試合で入れ替わり得る

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