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🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿
鈴木 彩艶
アストン・ヴィラ · GK

動かない1番と、3つの出場——欧州で先発を続ける日本人GK4人の、それぞれの9月

2026年9月19日 リリース·独自記事

9月17日、森保一が名簿を読み上げた。
ゴールキーパーは3人。早川友基、小久保玲央ブライアン、鈴木彩艶。
野澤大志ブランドンの名前はなかった。
長田澪バックハウスの名前は、この名簿にも、ドイツの名簿にもない。

4人とも、いま欧州のクラブで先発している。
5大リーグとベルギー1部で、日本人のキーパーが同じ月に4人、ゴールマウスに立っている。
私が記憶する限り、こんな9月は一度もなかった。

このコラムで書きたいのは、その4人の序列の話だ。
正確に言えば、序列が動かなくなったあとで、残りの3人が何を選んでいるか、という話である。

まず、動かなくなった1番のこと。

鈴木彩艶は8月、パルマからアストン・ヴィラへ移った。固定3000万ユーロに出来高500万。日本人選手としては史上最高額に並ぶ数字だ。
11日後、エミリアーノ・マルティネスがチェルシーへ去った。
ヴィラは控えを買ったんじゃない。後継者を先に確保してから、レジェンドを送り出した。
9月6日のハル戦で初めてゴールを守り切り、9月8日にはチャンピオンズリーグのピッチに立った。日本人のキーパーとして初めてのことだ。
ウナイ・エメリはハル戦のあと、彼が保持で試合を支配し、ビルドアップに加わってチームに忍耐をもたらした、と語っている。

もちろん、褒め言葉だけじゃない。
ヴィラの元スカウトは、ボックス内に来るボールへの対応と、出るか留まるかの決断の曖昧さを指摘した。
ただ、そういう批評が出ること自体が、彼がすでに批評される場所にいることの証明でもある。

夏のワールドカップで、彼は日本の4試合すべてに立った。
ブラジルとのラウンド32、ヴィニシウスのシュートをポストへ逸らしたあの場面を、私は何度も見返した。
1点差で負けた試合だ。
それでも、あの夜から日本の1番は動かなくなった。

ここで、2年前のことを思い出してほしい。

2024年のパリ五輪。日本のゴールキーパーは小久保が1番、野澤が12番だった。
鈴木彩艶は、いなかった。
シントトロイデンからパルマへの移籍が固まっておらず、最終的に協会の判断で外れた。
小久保は4試合すべてに先発した。グループステージ3試合を無失点で抜け、準々決勝でスペインに0-3で敗れて泣いた。
ファンは彼を国防ブライアンと呼んだ。

つまり、序列は逆だった。
2年前の夏、日本のゴールを守っていたのは小久保で、控えが野澤で、鈴木は蚊帳の外だった。
それが、たった2年でひっくり返った。
ワールドカップの4試合と、3500万ユーロの移籍で。

もっと遡れば、2019年のU-17ワールドカップは鈴木が1番、野澤が12番だった。
同学年の2人は、17歳のときから同じ順番で並んでいる。
パリで一度だけ、その順番が崩れた。鈴木がいなかったから。

小久保玲央ブライアンの言葉を引く。
2024年8月、シントトロイデンの入団会見だ。

"彩艶に追いつくとか追い越せではなくて"

そのあとに、周りのことは考えず自分らしくプレーしたい、と続く。
パリ五輪の直後、つまり自分が1番で鈴木が蚊帳の外だった直後に、彼はこう言っていた。
追いつくとか追い越せではなくて、と。

この言葉の重さが、2年経ってはっきりした。
昨季はリーグ38試合すべてに立ち、シントトロイデンは3位でヨーロッパの切符を取った。
夏にはパルマの名前が出た。鈴木が抜けた穴を、小久保で埋める案だ。
彼は残った。
8月には英国のメディアが、鈴木が日本の定位置を固めた以上、ナイジェリアは小久保の招集を検討すべきだ、と書いた。父の祖国である。
本人は何も言っていない。
そして9月17日、去年11月以来のA代表に呼ばれた。光栄に思う、と彼はコメントを出している。

その間に、9月12日のベーヴェレン戦でPKを止められなかった。
ベルギーのメディアは、直近27本のPKを1本も止めていない、と数字を並べた。
1番の座は動かない。国籍の話が外から飛んでくる。PKは止まらない。
それでも、シントトロイデンのゴールに毎週立っている。追いつくためではなく、と本人は言うだろう。

野澤大志ブランドンは、いちばん近くて、いちばん遠い。

昨季アントワープで正キーパーになり、クラブの年間MVPに選ばれた。
それでもワールドカップの名簿に入れなかった。ベルギーの新聞は驚きだと書いた。
夏には財政難のクラブが売却候補に挙げた。5大リーグの名前が並んだ。
結局、残った。
今季は6試合すべてに先発している。
8月31日のシントトロイデン戦は1-4で負け、地元紙は10点満点の4をつけた。荒木の先制点で飛び出しが遅れた。
9月13日のブルッヘ戦では、左足のロングフィードで同点ゴールをアシストした。試合はまた負けた。
3点目は防げたはずで、自分自身に失望している、と彼は試合後に語っている。一歩ずつ前進する、とも。

去年の夏、彼は日本のメディアにこう話していた。自分は一番下だ、もっともっとやらなければいけない、と。
いわてでJ3降格を経験し、自分の弱さを突きつけられた男の言葉だ。
A代表の出場は、まだ一度もない。
2024年のアジアカップも、去年11月の追加招集も、ベンチだった。
そして今回は、ベンチにも呼ばれなかった。

ピッチに立ったことのある人間なら分かると思うが、キーパーは途中出場で自分を示せない。
先発か、ゼロか。
だから野澤にとって、アントワープの6試合は代表の0試合を埋めるための、唯一の場所になっている。

4人目は、まだどの国のゴールも守っていない。

長田澪バックハウス。194センチ。ドイツのメンヒェングラートバッハに生まれ、川崎で育ち、川崎フロンターレの下部組織を経て、2018年にドイツへ戻った。
日本のU-15で1試合。それ以降はドイツのU-15からU-21まで、ずっとドイツのユニフォームを着てきた。
この夏、ブレーメンからフライブルクへ移った。約1500万ユーロ、クラブ史上最高額だ。
正キーパーだったノア・アトゥボルはフランクフルトへ貸し出され、長田が6試合すべてに先発している。フライブルクは開幕3連勝で首位に立った。

彼はまだ、日本かドイツかを決めていない。
今年3月、ドイツの雑誌に、どちらを選んでも間違った選択になる気がする、と話している。
ドイツ協会を断れば、これまで世話になった100人ほどの人間に影響が及ぶ、とも。
森保は彼が18歳のときにブレーメンまで会いに行っている。
この9月には、ユルゲン・クロップの新しいドイツ代表の候補に名前が挙がったと報じられた。
フライブルクの同僚、鈴木唯人は、日本を選んでくれたら嬉しい、と語った。

鈴木彩艶が動かない1番であることは、彼の選択にどう働くだろう。
日本を選べば、当面は2番か3番だ。
ドイツを選べば、層の厚いキーパー大国の中で順番を待つことになる。
どちらも簡単じゃない。
だからこそ、彼は毎週フライブルクのゴールに立つことを先に選んだのだと思う。国を選ぶ前に、出場を選んだ。

背景を、少しだけ。

川口能活がポーツマスへ渡ったのが2001年。次に川島永嗣がリールセへ行くまで、9年の空白があった。
キーパーは、日本人の欧州移籍でいちばん最後まで取り残されたポジションだった。
欧州4大リーグの正キーパーは、半数以上が190センチ以上だという。今夏のワールドカップに出た48か国の正キーパーの平均は189.9センチ。
日本の1番は190センチ。野澤と小久保は193、長田は194。
国内でゴールを守る大迫敬介が186、早川友基が187。
浦和時代に鈴木を育てた工藤輝央は、協会もサイズを重視して選手を選ぶようになった、と語っている。
松永成立は、キーパーコーチの水準が上がったことを理由に挙げた。

4人とも、海外にルーツを持つ。
それを日本人の身体的な弱点を補う存在だ、と言い切る論調もある。
私はそう言いたくない。
彼らは日本で育ち、日本の指導者に教わり、日本のクラブからヨーロッパへ出た。
補っているんじゃない。日本のキーパー像そのものを、更新している。

9月24日、宮城でウルグアイ戦がある。
1番は決まっている。
小久保はおそらくベンチから見守り、野澤はベルギーで週末の試合に備え、長田はまだ誰の名簿にもいない。

動かない1番と、3つの出場。
そのどれもが、キーパーというポジションにとっては、同じくらい重い。

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直接引用部分 ・引用文: "彩艶に追いつくとか追い越せではなくて" ・出典: 東京スポーツ「小久保玲央ブライアン、シントトロイデン入団会見」(2024年8月14日)に掲載された本人コメントの一部 間接引用部分 ・9月17日発表の日本代表GKが早川友基・小久保玲央ブライアン・鈴木彩艶の3人で、野澤が選外である点、小久保の「光栄に思う」旨のコメント(スポーツ報知 2026年9月17日、サッカーキング 2026年9月17日) ・ウナイ・エメリがハル戦後に「保持で支配し、ビルドアップに加わってチームに忍耐をもたらした」と語った点(Birmingham Mail、Yahoo Sports 経由 2026年9月) ・ヴィラの元スカウト、ブライアン・キングがボックス内対応と決断の曖昧さを指摘した点(Football Insider 2026年9月15日) ・パリ五輪で鈴木が「移籍未確定を理由に協会判断で選外」となった点(中日スポーツ 2024年7月8日、STVV 立石CEO談) ・小久保がパリ五輪準々決勝後に泣いた点、「国防ブライアン」の愛称(スポーツ報知 2024年8月、Goal 2024年8月2日) ・小久保が「周りのことは考えず自分らしくプレーしたい」と続けた点(東京スポーツ 2024年8月14日) ・夏にパルマ(鈴木の後釜候補)・レンヌの関心が報じられた点(Voetbalbelgie 2026年8月24日、Sky Sport スイス発) ・英 Get Football が「鈴木が定位置を固めたためナイジェリアは小久保招集を検討すべき」と書いた点(Football Tribe 2026年8月18日) ・小久保が直近27本のPKを止めていないという分析(Voetbalbelgie 2026年9月12日) ・野澤がアントワープの年間MVPに選ばれた点(FOOTBALL ZONE 2026年6月9日) ・野澤のW杯落選をベルギー紙が「驚き」と評した点(Football Tribe 2026年6月8日、Het Nieuwsblad 引用) ・財政難のアントワープが野澤を売却候補に挙げ、5大リーグの関心が報じられた点(Voetbalkrant 2026年6月20日・7月7日) ・8月31日 STVV 戦で地元紙が野澤に採点4/10をつけ、荒木の先制点で飛び出しが遅れたとした点(voetbal24 2026年8月31日、Het Nieuwsblad 採点) ・9月13日ブルッヘ戦のアシストと「3点目は防げたはず、自分自身に失望」「一歩ずつ前進」の要旨(フットボールチャンネル 2026年9月13日、Voetbalprimeur/Sporza 経由) ・野澤の「自分は一番下、もっとやらなければ」「いわてで弱さを突きつけられた」の要旨(footballista 2025年7月29日) ・長田の「どちらを選んでも間違った選択になる気がする」「DFBを断れば約100人に影響」の要旨(deichstube 2026年3月、11Freunde 引用) ・森保監督が長田18歳時にブレーメンを訪問した点(ゲキサカ 2024年2月11日) ・クロップ体制のドイツ代表候補リストに長田の名前が挙がった点、鈴木唯人の「日本を選んでくれたら嬉しい」(Football Tribe 2026年9月11日、kicker 引用) ・川口能活ポーツマス(2001年)から川島永嗣リールセ(2010年)まで約9年の空白、「取り残されたポジション」の指摘(FOOTBALL ZONE 西部謙司 2026年9月13日) ・欧州4大リーグ正GKの190cm以上が半数超(53.84%)である点(サッカーダイジェスト、ハリルホジッチ発言記事) ・W杯2026 48か国正GKの平均身長189.9cm(Qoly 2026年6月) ・工藤輝央の「JFAもサイズを重視して選手を選ぶようになった」(日刊ゲンダイ 2026年6月12日) ・松永成立の「GKコーチのレベルが向上した」(REAL SPORTS 2025年9月25日) 参考情報の使用 ・4人の今季出場(鈴木: ハル戦 9/6 初クリーンシート、CL ブルッヘ戦 9/8、野澤・小久保・長田: 各6試合全先発)は API-Football 由来の自社DB(2026年9月19日時点) ・鈴木の移籍(2026年8月19日、固定3000万+出来高500万ユーロ、日本人最高額タイ)、マルティネスのチェルシー移籍(8月30日)は自社DB data_note と Sky Sports ・W杯2026 日本の4試合とラウンド32ブラジル戦(1-2)は自社DB(wc_results) ・パリ五輪2024 GK 構成(小久保1・野澤12、鈴木落選)、4試合全先発・GS無失点・準々決勝スペイン0-3は JFA 公式・サカノワ ・U-17 W杯2019 の背番号(鈴木1・野澤12)は JFA 公式 ・小久保の昨季リーグ38試合、STVV 3位は自社DB・Sporza ・小久保の A代表歴(2025年11月初招集・ベンチ、2026年9月再招集)は自社DB(players.nt_history、2026年9月19日更新) ・野澤の A代表歴(2024年アジアカップ・2025年11月追加招集ともベンチ、出場ゼロ)は JFA マッチページ・ゲキサカ ・長田の経歴(2004年生まれ・メンヒェングラートバッハ・川崎フロンターレ育成・2018年渡独・日本U-15 1試合・ドイツU-15〜U-21・フライブルク約1500万ユーロ・クラブ史上最高額・アトゥボルのフランクフルト貸出)は自社DB(club_history、data_note)、Sportschau 2026年5月23日・8月30日 ・4人の身長(鈴木190・野澤193・小久保193・長田194)と大迫186・早川187は自社DB(players.height_cm) ・9月24日ウルグアイ戦(宮城)は JFA 公式日程 筆者の解釈・分析 ・「序列が動かなくなったあとで残りの3人が何を選んでいるか」という主題そのもの ・「私が記憶する限り、こんな9月は一度もなかった」は筆者の記憶に基づく感想であり、統計的事実として断定していない ・ヴィラが「控えを買ったのではなく後継者を先に確保した」という読み ・批評が出ること自体が「批評される場所にいる証明」という解釈 ・パリ五輪を「序列が逆だった2年前」と位置づけ、U-17 W杯2019 と結んだ時間軸の対比 ・小久保の入団会見の言葉を「2年経って重さがはっきりした」と読んだ点、「追いつくためではなく、と本人は言うだろう」は筆者の推量 ・野澤を「いちばん近くて、いちばん遠い」とした評価、「アントワープの6試合が代表の0試合を埋める唯一の場所」という解釈 ・「キーパーは途中出場で自分を示せない。先発か、ゼロか」という身体感覚の記述 ・長田について「国を選ぶ前に、出場を選んだ」という解釈、日本を選べば当面2番か3番・ドイツなら層の厚い競争という見立て ・「補っているんじゃない。日本のキーパー像そのものを更新している」という筆者の立場表明(身体的弱点を補う存在とする論調への反論) ・締めの「そのどれもが同じくらい重い」

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