夏の話を、短く。
リバプールが6,000万ユーロを用意している、と報じられた。
マインツは売却の社内期限を8月27日に切り、6,000万ユーロの値札を下ろさなかった。3,000万ユーロのオファーはあった。断った。
契約は2028年まで。解除条項はない。
期限が過ぎて、佐野は残った。
残った男の、4試合の数字だ。
インターセプト、15本。リーグ1位。2位のドルトムントのアントンが13本。
90分あたりに直しても、270分以上出た136人の中で1位だ。
ここまでは、いつもの佐野だ。
いつもと違うのは、この先にある。
パスの本数は、90分あたり37.7本から46.3本に増えた。
キーパスは0.74本から1.76本。2倍と少し。
アシストは2つ。昨シーズンは34試合で2つだった。
パス成功率91パーセントは、136人の中で8番目に高い。
5月に「攻撃は並だ」と書いた男が、4試合で、持って、出している。
2つのアシストの形が、それを言っている。
9月6日、ハンブルク。前半19分。
相手のキャプテン、レンベルクの横パスを読んで奪った。
奪った足で、そのままベッカーへ。1対1。決まった。
奪う人が、奪った次の一歩で、出す人になった。
9月19日、グラッドバッハ。2-2の78分。
今度は右からのクロスだった。マルテルが頭で合わせて、3-2。
最終スコアは4-3で、マインツはアウェーで勝った。
読んで奪う。それは前からできた。
奪ってから顔を上げる半秒が、今シーズンはある。
ただし、数字は別のことも言っている。
昨シーズン、佐野は401.1キロ走って、ブンデスリーガの3位だった。その前のシーズンは393.7キロで1位。
今シーズン、ブンデスリーガ公式の走行データを上位100人まで確かめると、走行距離は30位。
インテンシブランという強度の高い走りの回数は、200本で95位。
1キロあたりの強度は、走行距離とインテンシブランの両方で上位100人に入った74人の中で、いちばん低い。
走らなくなっている。
デュエルの勝率も、昨シーズンの62.7パーセントから、44.1パーセントに落ちた。
奪う回数は増えて、競り合いには負けている。
「走って奪う」から「読んで奪う」へ。そう読めば、上の数字と辻褄が合う。
ただの不調だ。そう読んでも、辻褄は合う。
4試合では、どちらとも決められない。
もうひとつ、正直に書いておく。
去年の9月も、佐野は3試合でインターセプト8本、1ゴール1アシスト、評点7.70だった。
インターセプトは月によって1本から12本まで振れる。
9月の佐野は、去年も速かった。
起用の形は、はっきり2つある。
パダーボルン戦とフランクフルト戦は、3-1-4-2のアンカー。中盤の底に、ひとり。結果は0-0と1-3。
ハンブルク戦とグラッドバッハ戦は、3-4-2-1の2ボランチ。隣に、ひとり。結果は5-0と4-3。
2つのアシストは、どちらも隣がいた試合で生まれた。
ひとりで底を守る日は、守る。
隣がいる日は、出ていく。
フィッシャーが去年の12月に来てから、佐野の仕事は、ひとつではなくなった。
5月に「攻撃の佐野には、まだ名前がない」と書いた。
名前は、まだない。
でも、4試合ぶんの数字は、ある。
10月10日、ブンデスリーガが再開する。
走らなくなった男が奪い続けるのか、奪ってから出し続けるのか。
確かめるのは、これからの30試合だ。
