シーズン終盤、アウェーのバレンシア戦でペナルティエリア外から右足を振り抜く。ゴール右下隅に鋭く突き刺さったシュートは、久保建英の今季ラ・リーガ2点目となった。
結果は1-1のドロー。
だが、そこに漂うのは達成感ではなく、どこか「それだけ?」という感覚だ。
今季の久保は、ここまで怪我による離脱を繰り返してきた。Fox Sportsのスタッツによれば、今節のバレンシア戦でのゴールが今季ラ・リーガ通算2点目。前シーズンの5ゴールと比べれば、数字の乖離は大きい。
もっとも、ゴール数だけで選手を測るのは乱暴だ。
ただ、25歳というタイミングを考えると、どうしても気になってしまう。レアル・マドリードの下部組織出身、日本に戻り再渡欧、マジョルカ、マジョルカから始まりビジャレアル、ヘタフェとローンを重ねて、2022年にレアル・ソシエダに腰を落ち着けた男。そのキャリアのグラフは、紆余曲折を経てようやく右肩上がりの気配を見せていた。前シーズンの36試合27スタート・5ゴールは、そのピークに近い数字だったはずだ。
今季はそこから落ちた。
怪我がある。それは事実だ。ピッチに立てない時間が、数字を押し下げている。サッカーをやったことのある人間には分かる話だが、ケガから戻るたびに「前の自分」を取り戻すのがどれほど難しいか。筋肉の記憶は正直で、数週間のブランクがパスのタイミングを、シュートの踏み込みの角度を、わずかにずらす。その「わずか」が、トップレベルでは致命的な差になる。
それでも、バレンシアに決めた。
しかも、これは今季の開幕節でも同じ相手にゴールを決めており、シーズンの始まりと終わりの両端でバレンシア相手に得点した格好になった。数字が物語るより、この選手とこのクラブの間には、何か相性のようなものがあるのかもしれない。
ゴール以外にも、この試合での久保は1タックル成功・2インターセプトと守備にも顔を出している。スタッツ的には地味な数字だが、要するに守備のスイッチも入っていた、ということだ。90分間を通じて、試合に没入していたことが伝わる。
ただ、チームは勝てなかった。
そこが、この試合の正直なところだ。
来月、久保はW杯を迎える。2026年の大舞台は、彼にとって2回目になる。
25歳というのは、サッカー選手として面白い年齢だ。若手のカテゴリーを脱し、でもまだ「ベテラン」には遠い。期待と現実の間で、自分の立ち位置を問い直す時間でもある。代表の戦術的な文脈や序列は、所属クラブでの調子と切り離せない。今季の久保が怪我を抱えながらも試合を重ねてきた事実は、W杯直前のコンディションとして吉と出るか凶と出るか。
誰にも分からない。
バレンシア戦の右足シュートは美しかった。でも、それがW杯への「弾み」になるのか、単なるシーズン終盤の1点に過ぎないのか、それを決めるのはこれからの時間だ。
