代表監督という仕事の残酷さは、「選ぶ」ことではなく「選ばない」ことにある。
選ぶのは楽だ。呼びたい選手に電話すればいい。難しいのは、呼ばない選手をどう扱うかであり、その判断をいつ下すかだ。
5月27日。コーマンがオランダ代表のW杯メンバーを発表する日取りを、当初より2日後ろ倒しにした。
NOSの報道によれば、その前の25日から27日にかけて、ゼイスト(オランダサッカー協会の施設)での合宿が設定されており、コーマンはそこで最終候補の選手たちを直接見て、話して、評価する機会を設けるという。
"2日間余裕を持つことで、選手たちがシーズン最終盤を問題なく乗り越えたか、より確実に把握できる"
この一言が、すべてを語っている。
「より確実に」。つまり、今の時点ではまだ確実ではない、ということだ。
普通に考えれば、大会2週間前の代表発表など、監督の頭の中ではとっくに終わっている。主力の顔ぶれは変わらない。フィルヒル・ファン・ダイク、フレンキー・デ・ヨング、コディ・ガクポ——こうした名前は、召集リストではなく「前提」として存在している。
問題は常に、残り数枠のグレーゾーンだ。
シーズン終盤に怪我をした選手、コンディションが戻りきっていない選手、あるいは直前の試合で急浮上してきた選手。そういう「迷いのある選手たち」のために、コーマンはあえて2日間を残した。
これは決断の先延ばしではない。むしろ逆だ。
発表を遅らせることで、自分の判断に「最新の情報」を反映させようとしている。それは監督としての誠実さの表れでもあるし、同時に、いかに今季のヨーロッパのシーズン終盤が選手のコンディション管理を難しくしているかの証左でもある。
少しピッチに立った経験があれば分かることがある。シーズン末というのは、体が正直になる季節だ。
積み重なった疲労、消えきらない違和感、「まあ大丈夫だろう」という自己申告——それらが本当に大丈夫かどうか、試合を見ただけでは分からない局面がある。だから監督は本人に会って、話して、目で見て判断しようとする。
ゼイストでの合宿はそのための場だ。グラウンドでの練習だけでなく、おそらく個別の面談も含まれているはずで、「直接見て、話して」というコーマンの言葉はそのことを指しているのだろう。
FIFAランク7位の国として6月15日のダラスに乗り込むオランダにとって、W杯はもはや「出場すること」が目標ではない。グループFを突破し、どこまで勝ち上がれるか——そういうフェーズにある。だからこそ、グレーゾーンの数枠に誰を入れるかが、トーナメントの流れを左右することもある。
それにしても、「最後のチャンス」という言葉の重さを想像する。
招集される保証もないまま、合宿に招かれる選手がいる。監督の前でプレーし、話し、何かを証明しようとする。選ばれればW杯、選ばれなければ——4年間待つか、あるいはもう機会は来ないかもしれない。
コーマンが2日間を残したのは、ある意味では「最後まで可能性を閉じない」という姿勢の表れでもある。冷酷に見えて、実は温情的な判断かもしれない。
ただ、その温情は残酷さと表裏一体だ。ギリギリまで「可能性がある」と思わせることは、同時に、最後の最後で「やはり選ばれなかった」という落差を大きくする。
監督という仕事は、そういう痛みを引き受ける仕事でもある。
27日の14時45分。コーマンが記者会見の壇上に立つとき、その場にいない選手たちの話もまた、静かに始まる。
