W杯の初戦まで、3週間を切った。
そのタイミングで複数の主力が離脱している、というのはどのクらいの痛みか。選手の立場からすれば、想像するだけで胸が締め付けられる話だ。
コーマンのオランダ代表が、W杯に向けた非公式なトレーニングキャンプを開始したというニュースが届いた。Voetbal Primeurが伝えるところによれば、今週ゼイストに集まったのはメンバー確定前の「審査対象」グループ。コーマン自身が3日間かけて選手を直接見極める、いわば最後の査定の場だ。
その営みそのものは理解できる。問題は、欠けているピースの多さだ。
マタイス・デ・ライト、シャビ・シモンスの離脱が確定している。ユリエン・ティンバーはアーセナルを欠場中で間に合うかどうか際どい状況。ステファン・デ・フライはインテルで負傷したものの重傷は免れた模様、とも伝えられている。
主要な軸が次々と削られていく状況だ。
シャビ・シモンスという名前が出てくるだけで、オランダ代表ファンの落胆は深いと思う。RBライプツィヒとパリSGを経由しながら欧州トップクラスへの階段を着実に上ってきた才能。ゼロトップ気味に振る舞いながら局面を打開するその動き方は、代替が利くようで利かない。コーマンの構想の中で彼が担っていた役割を誰かが埋めなければならないが、それは「穴埋め」にとどまる。
デ・ライトの不在も痛い。CBの枚数が削られる中で、ファン・ダイクにかかる負荷は増える一方だ。今夏34歳を迎える彼が、どれほどのコンディションで6月14日のダラスのピッチに立てるか。代表チームの守備陣は、核となる一人が欠けるだけで全体の重心が変わる。そのことはプレーしたことのある人間なら、感覚的に知っている。
一方で、ゼイストに集まった「審査組」には興味深い名前が並ぶ。
ノア・ラングはガラタサライで今シーズン存在感を示した。クイント・ティンバーはマルセイユで出場機会を重ね、実兄のユリエンとは異なるキャリアの形を選んでいる。マルク・フレッケンはレバークーゼンでヨーロッパ最高峰の守護神争いの中に身を置いてきた。
彼らにとって今週は、まさに人生の分岐点だ。
クラブシーズンを終えて体がリセットされる前、コーマンの目の前でどれだけ自分を示せるか。3日間という短さは非情にも映るが、プロフットボールの評価軸というのは常にそういうものだ。「公式戦100試合」より「監督が見た10分間」の方が決定的に働くことが、実際にある。
エマニュエル・エメガが今回の集合に含まれなかった、とNOSは伝えている。ストラスブールで負傷し直近4試合を欠場、W杯への望みは事実上断たれたとも。負傷のタイミングというのは残酷だ。シーズンを通じてアピールを続けてきた選手が、最後の最後で舞台を奪われる。サッカーに限らずスポーツにつきまとう、どうしようもない理不尽さだ。
コーマンが直面している現実を整理すれば、「欠員を数える作業」になってしまう。しかし代表監督の仕事とは本来そういうものではないか。完璧なメンバーが揃う幸運な大会など、ほとんどない。誰かが欠け、誰かが台頭し、監督の「選択眼」そのものが大会の色合いを決める。
今週ゼイストで何が起きているかを、コーマンだけが知っている。
5月30日にはW杯メンバー全員が集合する。そして6月14日、日本との初戦がダラスで始まる。
欠けたピースを数える時間は、もうない。
