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藤田譲瑠チマは出たい、安藤智哉は残りたい。降格クラブに残った日本人4人の開幕節

2026年8月10日 リリース·独自記事

欧州の8月は、下から始まる

今節(8月3日〜9日)、欧州で試合のメンバーに入った日本人選手は、当サイトの集計で42人。

うち36人が、実際にピッチに立った。

リーグの内訳には、はっきりした偏りがある。

ジュピラー・プロリーグ。ドイツ2部。イングランドのリーグカップ1回戦。

欧州のシーズンは、一斉には始まらない。ベルギーは8月8日に開幕したばかり。ドイツも2部が一足先に開幕し、1部とプレミアリーグはまだ夏の親善試合の途中にいる。

だから今節のカードには、開幕節の試合が並んでいる。伊東純也のアシストも、ゲンクの開幕戦で生まれたものだ。

先に始まるのは、たいてい下のカテゴリーだ。

8月上旬のスタッツ表は、格上のリーグを待たずに、下から埋まっていく。

そしてこの順番には、必然がひとつ含まれている。

昨シーズン、上のリーグから落ちたクラブは、いま下のリーグにいる。

つまり、降格した者たちのシーズンが、誰よりも先に始まる。


ドイツ2部に、降格組の4人

今節、2.ブンデスリーガでは10人の日本人選手がピッチに立った。

そのうち4人に、共通点がある。

藤田譲瑠チマ安藤智哉原大智。3人ともザンクトパウリ。

そして塩貝健人。ヴォルフスブルク。

いずれも昨季、ブンデスリーガ1部でプレーしていた。

ザンクトパウリは最下位で降格。ヴォルフスブルクは16位で入れ替え戦に回り、パーダーボルンに敗れて、1997-98シーズンから守り続けたトップリーグの座を失った。

4人は、降格したクラブに残ったまま8月を迎えた。

普通に考えれば、不遇の話に見える。代表の仲間たちの多くは、まだ1部の開幕を待っている。その横で、彼らのシーズンだけが2部で始まった。

でも、一人ずつ追っていくと、そんなに単純な話ではなかった。

降格という同じ出来事が、4人にまったく違う意味を持っていた。


出たい人、残りたい人

いちばんわかりやすいのが藤田譲瑠チマだ。

7月中旬、地元紙『Hamburger Abendblatt』が、藤田がクラブに退団希望を伝えたと報じた。1部でプレーしたい、という意思表示である。

24歳。昨夏にシント=トロイデンからクラブ史上2番目の移籍金で加入し、1年目からブンデスリーガで存在感を示した。2部で1年を使う理由は、たしかに見つけにくい。

8月に入ると、今季チャンピオンズリーグに出るランスの名前まで浮上した。移籍が実現すれば、クラブ史上最高額になるという報道もある。

一方で、マルセル・ラップ監督の姿勢ははっきりしている。ここにいる限り、彼は使う。契約は残っている。移籍はそう簡単には成立しない――。

そして実際、開幕戦の藤田は先発フル出場だった。

出たいと言った選手を、外さずに使う。

ザンクトパウリらしいと言えば、らしい。

安藤智哉は、逆だった。

同じ『Abendblatt』が6月、安藤について「本人が移籍を望んでいない」と伝えている。降格しても、残る。

そして今節の評点は7.50。ザンクトパウリの日本人3人では、いちばん高い数字だった。

残ると決めた選手が、開幕戦でいちばん良い出来だった。

これはこれで、ひとつの答え方だと思う。


評価されたから、動けない

塩貝健人の話は、少し皮肉だ。

今年1月、ヴォルフスブルクは契約解除金を満額支払って、NECナイメヘンから塩貝を獲得した。契約は2030年まで。移籍後初ゴールも決めた。

そしてチームは降格した。

この夏は、かねて獲得を狙ってきたハンブルガーSVへの移籍が取り沙汰されていた。

ところが8月上旬、その話に暗雲が漂っているとドイツ側が報じた。

理由は、ヴォルフスブルクの新監督が塩貝を高く評価したから、である。

放出は保留。残留が濃厚になった。

評価されたから、動けなくなる。

移籍市場には、こういうねじれが普通に転がっている。

開幕のカイザースラウテルン戦、塩貝は途中出場の27分だった。


そして、出番が回ってきた人

原大智の8月は、他の3人とは向きが違う。

今年1月、京都サンガからザンクトパウリへ。26歳での欧州再挑戦だった。

ただ、1部ではなかなか出番が来なかった。3月の時点で、リーグ戦の出場時間は合計30分ほど。現地メディアに「出番が限られている」と書かれる立場だった。

その原が、開幕戦に先発で73分プレーしている。

もちろん、1試合だけの話だ。

「降格が出番を運んできた」と言い切るには、まだ早い。

ただ、1部で30分だった選手が、2部の開幕戦に先発で73分立った。

その事実は、記録しておく価値があると思う。


来週、表の顔ぶれが入れ替わる

ここまで書いてきた4人のクラブは、来週こういう組み合わせで戦う。

8月14日 ホルシュタイン・キール vs ザンクトパウリ 関根大輝のキールと、藤田・安藤・原のザンクトパウリ。

8月16日 ハノーファー96 vs ヴォルフスブルク 松田隼風のハノーファーと、塩貝のヴォルフスブルク。

2部で戦うクラブ同士の対戦に、日本人が集まる。

欧州カップの予選も始まる。

チャンピオンズリーグ予選には、ハーフナー・ニッキのユニオン・サン=ジロワーズと、小川航基のNECナイメヘン。

ヨーロッパリーグ予選には、北野颯太のザルツブルクと、小林友希のヤギェウォニア。

カンファレンスリーグ予選には、鈴木淳之介のコペンハーゲン、伊藤敦樹のヘント、板倉滉のアヤックス。

そして14日の夜には、イングランド・チャンピオンシップも開幕する。森下龍矢大橋祐紀のブラックバーンは、初戦からウルヴスと当たる。相手は、プレミアから降格してきたクラブだ。

平河悠斉藤光毅岩田智輝松木玖生菅原由勢。リーグカップで先に姿を見せた選手たちも、リーグ戦に入っていく。

来週の表は、今週よりずっと厚くなる。

今週の36人は、シーズンの入口の数字にすぎない。

それでも、この入口には、入口にしか見えないものがある。

降格したクラブに残った4人が、それぞれ違う顔で8月に立っている。

その姿は、全員がそろった9月の表のなかでは、たぶん見えなくなる。


今節の全カードと出場時間・評点は「日本人選手ウィークリースタッツ」で公開しています。毎週月曜朝更新。

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