夏の欧州には、二つの時計がある。
ひとつは9月2日に閉まる移籍市場の時計。もうひとつが、8月末で止まる予選の時計だ。
後者が、止まった。
8月18日から28日までの10日間で、プレーオフ全カードが決着し、リーグフェーズの組み合わせ抽選まで終わった。追跡してきた日本人選手のうち、35人が秋の本大会行きを決めた。
欧州の舞台から消えたのは、ひとりだけだった。
3-0からの45分間
セルティックは、勝っていた。
第1戦ホームでLASKに3-0。第2戦でも先に加点して、合計4-0。CL本大会は、もう手の中にあるはずだった。
そこから5点を失った。
延長までもつれた第2戦は1-5。合計4-5。旗手怜央は2戦とも途中出場でピッチに立ったが(第1戦25分、第2戦57分)、傾いた流れは戻らなかった。
欧州の予選には、こういう夜がある。だから面白く、だから残酷なのだ。
救いはある。CLプレーオフの敗者にはEL本大会が約束されている。旗手の秋は、木曜日の夜に移った。
同じ夜、松岡大起のスロバン・ブラチスラバは逆のドラマを生きていた。ツェリェと1-1で折り返した第2戦、延長の末に2-1。合計3-2で、2季ぶりのCL本大会をつかんだ。日本人所属クラブでプレーオフからCLに勝ち上がったのは、このクラブだけだ。
敗れても、終わらない
シント=トロイデンは第1戦をオモニアに1-0で先勝しながら、アウェーの第2戦で2-4。合計3-4で敗れた。
それでも、終わらない。
ELプレーオフの敗者はECL本大会に回る。小久保玲央ブライアン、谷口彰悟、伊藤涼太郎ら日本人8人の「欧州本大会」は、大会の看板を掛け替えて確定のままだ。
辛島侑烈のカウノ・ジャルギリスも同じ道をたどった。ベシクタシュに合計1-3。ただしホームの第2戦は1-0で勝っている。リトアニアのクラブが、トルコの名門を一度は黙らせた。この経験を持ってECLに入る。
ザルツブルク(北野颯太、チェイス・アンリ)はミェルビーに合計4-0、ヤギエロニア(小林友希)はイベリア・トビリシに合計6-1。こちらは危なげなくELへ。
33分で、2ゴール
数字だけ並べる。10分で1点。23分で1点。
フライブルクの後藤啓介は、マザーウェルとのプレーオフ2戦とも途中出場で、2戦ともゴールを決めた。合計出場33分で2得点。評価点は7.5と7.2。切り札としては、これ以上ない名刺だ。
チームは合計7-2で突破。鈴木唯人が両戦に出場し、GK長田澪バックハウスは2試合フル出場。ただし山本理仁はメンバー外が続いた。4人の秋は、そろってECLで始まる。
コペンハーゲンの鈴木淳之介も、アウェー0-0、ホーム4-1の2試合を一人でフルに戦い抜いた。加入したばかりの23歳が、もう欧州の背骨になりつつある。
ひとりだけの、夏の終わり
横田大祐は、いいプレーをしていた。
ヤブロネツとの第1戦、右WBで先発してアシストを記録し、1-0の勝利に貢献した(評価点7.2)。第2戦も先発。だが0-1で追いつかれ、合計1-1からのPK戦を3-4で落とした。
レンジャーズの欧州は、そこで終わった。追跡してきた日本人所属クラブで、本大会にたどり着けなかったのはこの1クラブだけだ。
敗因を横田に求める者は、グラスゴーにもいないだろう。それでも、敗退の重さは平等に降る。24歳の欧州1年目は、国内リーグとカップに絞られた。
いない者たち
この10日間、ピッチに姿のなかった名前もある。
三笘薫。ブライトンはトロムソに合計4-0で危なげなくECL本大会を決めたが、三笘は2戦ともメンバー外だった。昨季終盤に痛めたハムストリングの手術からリハビリ中で、指揮官は「復帰に近づいている」と口にしつつ、慎重な姿勢を崩していない。
南野拓実。モナコも合計7-3で突破したが、南野は昨年12月の前十字靭帯負傷からの復帰待ちが続く。
そして、クラブごと「日本人不在」になったところもある。NEC(小川航基→町田)、アヤックス(板倉滉→ボルシアMG)、ヘント(伊藤敦樹→ボルトン)。3クラブとも本大会には進んだが、その舞台に日本人はいない。夏の移籍市場の詳細は移籍市場ウィークリーに譲る。
そして、相手が決まった
8月27日と28日、組み合わせ抽選。最終的な布陣はこうなった。
CL 7人、EL 11人、ECL 16人。計35人、21クラブ。
抽選の目玉は、はっきりしている。クリスタル・パレスだ。
鎌田大地と冨安健洋のパレスは、8試合中4試合が日本人所属クラブとの対戦になった。ホームにホッフェンハイム(町田浩樹)とレアル・ソシエダ(久保建英)を迎え、アウェーでザルツブルクとヤギエロニアに乗り込む。EL全体では日本人対決が6カード。ロンドンとバスク、ウィーン郊外とビャウィストク。木曜の夜が、そのまま日本人ダービーの夜になる。
ECLでも4カード。三笘のブライトンはホームに南野のモナコと辛島のカウノを迎え、フライブルクはそのカウノとモナコの両方と当たる。狭い大会だ、と笑うにはもったいない顔ぶれだろう。
CLの日本人対決はゼロ。その代わり、舞台の大きさで釣りが来る。遠藤航のリヴァプールはアトレティコ、ポルト、インテル。伊藤洋輝のバイエルンはアーセナルとマンチェスター・ユナイテッド。そして松岡のスロバンには、PSG、インテル、ローマ。スロバキアの王者が積み上げた延長120分の先に、この景色が待っていた。
ひとつ、因縁も書き添えておく。セルティックを沈めたLASKは、CL本大会でリヴァプールと当たる。遠藤が、旗手の仇を討つ格好だ。
開幕はCLが9月8-10日、ELが9月16-17日、ECLが10月15日。その前に、9月2日には移籍市場が閉まる。35人の名簿は、まだ数日だけ動きうる。
各クラブの現在地は本戦マップに、3大会×36クラブの全カードは組み合わせ一覧にまとめてある。秋の観戦計画は、そこから立ててほしい。
