7月19日の決勝、スペインが延長の末にアルゼンチンを1-0で下し、W杯2026が幕を閉じました。北中米3カ国共催、48カ国・全104試合の長い大会でした。
football-wireでは開幕前に、全出場国の優勝確率を計算して公開していました。大会が終わったいま、あの予想はどれくらい当たっていたのか。当たったところも外れたところも、正直に答え合わせしてみます。
そもそも、どうやって予想していたのか
まず手法の話を、できるだけかみくだいて。使っている道具は2つだけです。
1つ目は「Eloレーティング」。もともとチェスの強さを測るために生まれた採点方式です。ルールはシンプルで、勝てばポイントが上がり、負ければ下がる。格上に勝てば大きく上がり、格下に勝ってもあまり増えない。これを長年積み重ねると、世界中の代表チームの「地力」を同じ物差しの上に並べられます。
開幕前のトップ5は、スペイン(2165)、アルゼンチン(2113)、フランス(2081)、イングランド(2020)、ブラジル(1988)でした。
2つ目が「モンテカルロ・シミュレーション」。名前はいかついですが、中身は「コンピューターの中でW杯をまるごと10万回開催してみる」というものです。1試合ごとにElo差から勝率を計算し、その確率でくじ引きをして勝敗を決める。開幕戦から決勝までこれを通しでやって、10万大会ぶんの結果を集計します。
10万回のうち、スペインが優勝したのは約2万9千回。これが「優勝確率28.9%」の意味です。1チームをズバリ断言するのではなく、こうやって確率で示すのがこの予想のやり方です。
答え合わせ①:優勝とベスト4は読めていた
開幕前の優勝確率トップ10と、実際の結果を並べてみます。
| 開幕前 | 国 | 優勝確率 | 4強到達確率 | 実際の結果 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | スペイン | 28.9% | 55.5% | 優勝 🏆 |
| 2位 | アルゼンチン | 19.0% | 46.2% | 準優勝 |
| 3位 | フランス | 14.6% | 44.5% | 4位 |
| 4位 | イングランド | 7.0% | 29.6% | 3位 |
| 5位 | ポルトガル | 4.2% | 18.8% | 16強 |
| 6位 | ブラジル | 4.0% | 21.3% | 16強 |
| 7位 | コロンビア | 3.8% | 17.4% | 16強 |
| 8位 | オランダ | 2.5% | 17.1% | 32強敗退 |
| 9位 | エクアドル | 2.1% | 14.8% | 32強敗退 |
| 10位 | ドイツ | 1.7% | 13.6% | 32強敗退 |
優勝確率1位のスペインが、そのまま優勝しました。「各試合で勝率の高い方が勝ち上がる」と仮定した1本予想のブラケットでも、優勝はスペイン。ここは胸を張っていいところだと思います。
そして、われながら出来すぎだと思うのがベスト4です。実際の4強(スペイン・アルゼンチン・フランス・イングランド)は、開幕前の優勝確率上位4カ国と完全に一致しました。
ベスト8は予想上位8カ国のうち4つ、ベスト16は上位16のうち12が的中。「地力の序列」という意味では、大枠をかなり正確に読めていたことになります。
答え合わせ②:それでも番狂わせは起こる
もちろん、外れたところもあります。むしろ、そこがW杯の本体かもしれません。
ベスト8には、予想上位8の圏外からベルギー、ノルウェー、スイス、モロッコの4カ国が飛び込みました。逆に、8〜10位評価だったオランダ、エクアドル、ドイツは、そろって初戦のラウンド32で姿を消しました。5位ポルトガル、6位ブラジルも16強止まりです。
3位に入ったイングランドも、開幕前は優勝確率7.0%の「4番手」評価でした。フランスとの3位決定戦を6-4、両チーム計10ゴールの乱打戦で制したあの勢いまでは、さすがに数字では読めません。
ここで、確率予想の読み方をひとつ。スペインの28.9%は、裏を返せば「10回やれば7回は外れる」数字です。ベスト16の12/16的中も、4カ国は外している。つまり、番狂わせが起こること自体は最初から織り込み済みなんです。ただ、「どこで、誰が起こすか」までは当てられない。それを毎回見せてくれるから、W杯は面白いのだと思います。
日本代表の答え合わせ
| 日付 | ラウンド | 結果 |
|---|---|---|
| 6/13 | GS第1戦 | オランダ 2-2 日本 |
| 6/20 | GS第2戦 | チュニジア 0-4 日本 |
| 6/24 | GS第3戦 | 日本 1-1 スウェーデン |
| 6/28 | ラウンド32 | ブラジル 2-1 日本 |
開幕前のエンジンの見立ては、**グループ突破96.8%、16強入り48.1%、8強26.7%、優勝1.3%**でした。
結果は1勝2分、F組2位で突破。96.8%という数字が示すとおりの本命シナリオです。チュニジア戦の4-0は、今大会いちばん気持ちのいい90分でした。
その先のラウンド32は、確率上ほぼコイントス(48.1%)。そして引いた相手が、優勝候補6番手のブラジルでした。決まった時点で、正直かなり分の悪いクジです。1-2という結果も含めて、「突破は堅い。その先は組み合わせ次第」というエンジンの評価は妥当だった、と言えそうです。
手法の振り返り:数字で読めるもの、読めないもの
今大会を通じてはっきりしたのは、Elo+モンテカルロという素朴な組み合わせでも、チームの「地力の序列」はかなり読めるということです。優勝と4強の的中が、その何よりの証拠です。
一方で、読めないものもはっきりしました。一発勝負の綾。大会の中で化けていくチームの勢い(今回ならイングランドやモロッコ)。戦術の相性や、直前のコンディション。Eloは過去の結果の積み重ねなので、「いま起きつつある変化」には一歩遅れて反応します。
このあたりをどう補っていくかは、次の大会までの宿題にします。
おことわり:今回の数字について
最後に、手法の透明性のために正直に書いておきます。この記事の「開幕前予想」の数値は、当時のリアルタイム計算の記録をそのまま保存していたものではありません。eloratings.netの2026年6月4日時点(開幕1週間前・W杯の結果を含まない)のレーティングをWayback Machineのアーカイブから取得し、予測ページと同じモンテカルロエンジン(10万回シミュレーション・終了試合ゼロ)で「開幕前の予想」を再現計算したものです。
また、モンテカルロ法の性質上、確率には±0.1%程度の乱数によるブレがあります(小数1桁で丸め)。開幕直前1週間の親善試合によるレーティングの微小な変動は含んでいません。
