【追記 8/16】 本稿の公開直後、PSGへの完全移籍そのものが破談した。8月15日、メディカル当日にPSGがプライベートジェットまで手配した段階で、代理人側が最大€500万の手数料を要求。レキップによればクラブはこれを「脅し」と受け取って撤退した。本稿は「壊したのは選手側だった」と書いたが、その射程は移籍先の選択にとどまらず、移籍そのものに及んだことになる。アストン・ヴィラが同条件で交渉に入っている。最新状況は移籍トラッカーを参照。
前号で「答え合わせは、窓が閉まってから」と書いた。 その答え合わせが、思ったより早く一つ来た。しかも、予想とは違う形で。
独・仏の登録期限は8月31日。残り16日。 英・西・伊は9月1日。
先週「秒読み」と書いた案件は、確かに決着へ向かった。ただし決着したのは移籍そのものであって、行き先ではなかった。
鈴木彩艶、合意の先にあったもの
パルマとPSGは€3,500万で合意した。5年契約。8月14日までにパリでメディカル。ここまでは先週の予告どおりだ。
崩れたのは、その先だった。
レキップは一度「PSGとユベントスが買い取りオプションなしの今季レンタルで合意」と報じている。ところがUEFAスーパーカップを境に、両クラブの連絡が途絶えた。スカイのディ・マルツィオ氏が「突然の停滞」と伝え、アグレスティ氏が理由を書く——本人がPSGの示したプランに、まだゴーサインを出していない。
先週、私は「合意の後ですら壊れるのが常態だ」と書いた。今週その実例が出たわけだが、壊した主体が興味深い。クラブでも、登録期限でもない。選手だった。
コリエレ・デロ・スポルトは彼を「非常にはっきりした人格の持ち主」と評していた。完全移籍で加入したいのに、なぜ1年目から貸し出されるのか。納得できるまで、23歳は首を縦に振っていない。ユベントスは待ちきれず、トッテナムのヴィカーリオへ舵を切った。
そしてレキップは、もう一つの可能性を書いている。鈴木がPSGの正GKになり、シュバリエが出ていく——そのシナリオだ。
移籍は決まった。どこでプレーするかは、まだ決まっていない。
「ノー」と言える者、言えない者
上田綺世にも「ノー」があった。
フェネルバフチェが€2,000万超の正式オファーを出した。ただし、正式オファーはこの1件だけだ。代理人は「ルカクがいても出場機会は得られる」とトルコ行きに前向きで、本人はプレミアを望んでいる。蘭メディアは「今月中の放出」を書きながら、他に手が挙がらなければ残留の目もあると付け加えた。夢と現実の間に、代理人が立っている。
一方で、「ノー」を言われた側もいる。
遠藤航。先週まで「CB起用での残留合意」と報じられていた男に、リバプールは今週、放出方針を伝えた。イラオラ監督の中盤序列はソボスライ、ヴィルツ、マクアリスター、フラーフェンベルフ。控えにジョーンズとニョニ。「遠藤らは検討すらされていない」。クラブは関心クラブへ自ら連絡を取っている。フラム、ウェストハム、ウルバーハンプトン。契約は残り1年、シーズン中に34歳になる。
板倉滉は、もっと静かだ。アヤックスの技術部長ジョルディ・クライフは「今後数週間で売却する」と決め、開幕戦のベンチにも彼はいなかった。推定移籍金は€810万。1年前に€1,050万を払って獲得したクラブが、いま帳簿を下回る額で手放そうとしている。
そして伊藤涼太郎には、そもそも交渉のテーブルがない。STVVとの契約は満了し、現在は無所属。ベルギー紙は「日本での新たな所属先を待ち焦がれている」と書いた。今夏のオフには、水戸の練習に参加していたという。
残り16日の見取り図
値札の攻防(続)——佐野海舟。今週、RBライプツィヒが最有力候補として浮上した。マインツのハイデルSDは「€2,500万では彼の片足すら買えない」。契約は2028年まで、解除条項なし。最終的な移籍金は€5,000万超がほぼ確実とされる。売り手が完全に主導権を握った交渉だ。
時計が長い場所——中村敬斗。ランスは€2,500万から動かず、現地では「来年1月まで仏2部に留まる」シナリオまで語られ始めた。ベシクタシュの名も挙がっている。
算数で押し出される者——高井幸大。トッテナムはホームグロウン枠外の21歳以上が20名、上限は17名。3人を出さなければ登録が組めない。プレシーズン全3試合に出て評価も得た21歳が、ピッチの外の算数で押し出されようとしている。
風向きが変わった者——塩貝健人。2部降格で退団確実と見られていたが、8月に入ってヴォルフスブルクの新監督が高く評価し、放出を保留した。今夏、逆方向に振れた数少ない一人だ。
そして三笘薫。契約延長交渉は「大きな進展の兆候なし」(ジ・アスレティック)。5月の負傷から慎重な調整が続き、8月23日の開幕アストン・ヴィラ戦は難しい。残り契約は1年を切っている。
反対方向の風
出ていく話ばかり書いてきたが、今夏は入ってくる話も多い。
荒木遼太郎が鹿島からSTVVへ。宇野禅斗が清水からボルシアMGへ。中村草太が広島からル・アーヴルへ。荻原拓也が浦和からOHルーヴェンへ。笠柳翼と高岡伶颯は、ベルギー2部で同僚になった。松永颯汰は大卒1年目でポルトガルへ渡っている。
移籍トラッカーは今週、この7人を含む新規欧州移籍組を選手データベースに追加した。掲載は41案件になった。出ていく者を数えるだけでは、この夏の全体像は見えない。
締切カレンダーを、もう一度。 独・仏 8月31日。英・西・伊 9月1日。蘭 9月2日。ベルギー 9月8日。葡 9月15日。サウジ 10月12日。
残り16日。決めるのはクラブか、選手か、それとも時計か。 全案件の現在地は移籍トラッカーで毎週更新している。
